第一部
第五章 〜再上洛〜
六十 〜蠢く影〜
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ない。
「待て」
私が声をかけると、連中はジロリと睨んできた。
「何だぁ、テメェ?」
「優男さんよ、怪我したくなけりゃ、引っ込んでな!」
凄む男達。
ねねは何か言おうとしたが、私はそれを目で制した。
「貴様。骨折したと言う割には、随分と元気そうだが?」
「うるせぇ! ああ、痛ぇ痛ぇ」
わざとらしく、足をさすり出す。
「ほう。だが、ぶつかったという脚と反対が痛むとは、奇妙な骨折があったものだな」
「……な」
「そうですぞ! ねねがぶつかったのは左脚なのに、何故右脚をさすっているのです!」
ねねが叫ぶと、周囲にいた野次馬から忍び笑いが上がる。
「てめぇら……ぶっ殺す!」
顔を真っ赤にした男が、剣を抜いた。
他の男も、思い思いの得物を手にする。
取り巻いていた野次馬は、一斉に悲鳴を上げて散って行く。
「先ずは、その者を放すが良い」
「ああん? 俺様に命令する気かよ?」
男はにやりと笑い、ねねに剣を突き付ける。
「放して欲しけりゃ、それなりの誠意ってモンがあんだろ?」
「ほう。誠意とな?」
「そうだ。まずは有り金と、その剣を寄越しな。そうしたら考えてやってもいいぜ?」
「…………」
「おい、どうした? 急に惜しくなったのか、優男さんよ?」
野卑じみた男の声。
……武士の魂を、何とも思わぬのか。
「もう一度だけ言う。今すぐ、その娘を放せ。そして、この洛陽より立ち去れ」
「ああん? おい、こいつ頭おかしいんじゃねぇか?」
「どうせ空威張りだろうさ。ちょいと脅かしてやりゃ、泣いて命乞い始めるに決まってるさ」
如何にも切れ味の悪そうな剣を、別の男が突き付けてきた。
「止めておけ。今ならまだ、死なずに済むぞ?」
「ほざけ!」
いきり立った男は、私に襲いかかってきた。
力任せの、剣の何たるかも理解しておらぬ攻撃。
兼定を抜くまでもない。
男の一撃を躱すと、伸びきった腕を捉える。
そして足払いをかけ、そのまま投げ飛ばした。
「うぉぉぉぉっ!」
ドスン、と地響きを立てて、男は大の字に伸びた。
男共は一瞬、呆気に取られていたが、
「や、野郎! ぶった切ってやる!」
皆、怒り心頭といった風情だ。
「ふむ。どうやら、命の要らぬ者ばかりのようだな」
「しゃらくせぇ!」
一人の男が、剣を振り上げた。
……が。
「ぐ……ぐはっ!」
次の瞬間、大量の血を吐きながら、前のめりに斃れた。
「……ねね。大丈夫?」
「れ、恋殿っ!」
方天画戟を手にした、赤髪の少女。
無表情のように見えて、微かに怒りが浮かんでいる。
だから、止せと申したのだが、な。
「り、呂布だ……」
「そそ、そんな馬鹿な」
「……お前ら、死ね」
恋は、方天画戟を振りか
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