第一部
第五章 〜再上洛〜
五十九 〜新たな決意、去りゆく者〜
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きになさい」
「そ、そんな……」
「いや〜、華琳様のご命令では仕方ありませんね。では伯母さん、覚悟して下さいね」
笑顔なのだが、何故か寒気を覚えさせる言い方。
現に、荀ケはガタガタと震え出した。
「荀ケ。素直に詫びた方が身の為。そう愚見するが?」
「……わ、悪かったわよ。どちらも取り消すわ、この通りよ」
深々と頭を下げる荀ケ。
身震いが止まらぬのは、恐怖か、それとも屈辱か。
……両方なのであろうな、恐らく。
「だそうだけど。歳三、郭嘉。どう?」
「私は気にしておらぬ。荀攸の申す通り、野次馬が集まり過ぎておるようだ」
騒ぎを聞きつけてか、周囲には人だかりが出来始めていた。
「……歳三様がそう仰せならば」
「なら、この場は仕舞いね。……桂花、貴女は少し、銀花を見習いなさい」
「全くですよ。もっとも、私は改めてのお仕置きでも別に」
「わーっ、わーっ! 聞こえない、聞こえないわよ!」
取り乱す荀ケに、私と華琳は苦笑するばかりであった。
……しかし、曹操に『我が子房』と言わしめた荀ケ、この世界ではまるで面影がないな。
出仕場所と指定された屋敷に到着。
華琳は、隣り合った屋敷へと入っていく。
「助軍校尉、土方。罷り越した」
「お待ち申し上げておりました。此方へ」
門を潜ると、二人の人影が建物から出てくるのに出くわした。
「おお、土方。……いや、今は土方殿とお呼びせねばならぬな」
「見事に出世を遂げられたようだな。お祝い申し上げよう」
皇甫嵩に朱儁。
いずれも黄巾党征伐で功を上げた、歴戦の勇将。
本来ならば、彼らこそが昇進を遂げるべきであるのだが……。
この屋敷も、本来は彼らが執務を行う場所であった。
「日食は不吉の前兆。それで職を免ぜられるのであれば、それも運命よ」
「それに、些か我らも老いた。これからは貴殿らの時代、そういう事だ」
意外に、二人はさばさばした様子である。
「皇甫嵩殿、朱儁殿。本当に、未練はござらぬのか?」
私の言葉に、二人はフッと笑う。
「我が生き様に、悔いなどないさ。なあ、朱儁?」
「ああ。……だが土方殿、貴殿を幕下に招こうなどと言った私は、如何に先見の明がなかったか。それだけは、大いに恥じ入るところだ」
「いえ、それはありますまい。お二人がおらねば、まだ大乱は続いていた事でしょう」
「ふふ、そう言って貰えるだけ、働いた甲斐があるというものだ」
「それで、これからはどうなさるおつもりか?」
「さて。もう宮仕えにも飽いた。故郷に戻り、のんびりと過ごそうかと思っているところよ」
「私もだ。皇甫嵩から誘われた事だし、それも良いとな」
……そういう事か。
「ではな。陛下を、庶人を頼んだぞ」
「また会う事もあろう。貴殿の活躍を、遠い空
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