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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
五十九 〜新たな決意、去りゆく者〜
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如き人物なら、この大陸に掃いて捨てる程いるのではないか?」
「いえ、それはあり得ませんわね。もしそうだとしたらわたくし、あなた様にあのような失礼な事、申し上げる必要はありませんでしたもの」
 そう語る袁紹の眼に、何やら決意が感じられた。
「土方さん。お願いがありますの、聞いていただけますか?」
「聞くのは構わぬが、受けられるかどうかはまた別問題だ。それで良ければ申すが良い」
「……わたくしを」
「…………」
「わたくしを、土方さんの弟子に、していただけないでしょうか?」
「弟子だと?」
 流石に、想定外の申し出であった。
「はい。……先日、程立さんが一緒だった際の事、覚えていらっしゃいます?」
「風と……」
 確か、何やら竹簡を手にしていた、あの時か。
「実は、あの竹簡はこれなんですの」
 袁紹はそう言いながら、竹簡を私の前に置いた。
「見ても良いのか?」
「構いませんわ」
 紐を解き、竹簡を広げる。
 ……何だ、これは。
「袁紹殿。これは全て、風が?」
「そうですわ」
「何時の間に、このような……」
 思わず、呟きが漏れる。
 そこに記されていたのは、私が魏郡に赴任してよりの、太守として行った施策が簡潔に記されていた。
 あくまで簡潔なものであり、詳細や機密に触れる事は書かれていないが。
 ……どういうつもりなのだ、風は。
「もともとは、私が程立さんに相談した事がきっかけでしたの。どうすれば、土方さんのような優れた業績を残せるか、と」
「ふむ」
「それで、程立さんから、これをいただいた訳ですわ。写本だから構いません、と」
 写本……複製してどうする気なのだ、一体?
 後で本人には問い質さねばなるまい。
「しかし、私の治政など見てどうする気だ? 同じ治政ならば、華琳の方がよほど参考になると思うが?」
「そんな事はありませんわ。確かに華琳さんも陳留を見事に発展させていますが……」
 袁紹は喉が渇いたのか、茶碗を口に運ぶ。
 だが、中身は先ほど、干したばかりだ。
「水で良いか?」
「え?」
 返事を待たず、袁紹の手から茶碗を取ると、背後の甕に柄杓を入れる。
「あ、ありがとうございます」
「良い。一息つくのも良かろう」
「はい」
 茶碗の水を一気に干すと、ふう、と息を吐いた。
「生き返りましたわ。ええと、どこまで……」
「華琳が陳留で手腕を発揮した、というところまでだ」
「そうでしたわね。華琳さんの治政では、意味がありませんの」
「何故か?」
「理由は、二つありますわ。まず、陳留は洛陽に近く、治安も比較的良かった地。荒廃していたギョウよりも条件が良かった……で合ってますわよね?」
「合っているようだが。何を気にしておるのだ?」
「い、いえ。もう一つは、華琳さんはご自分の
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