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そこにある美
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第一章

                      そこにある美
 オルフェウスは武器を使わない。竪琴を奏で歌を歌う。
 その彼の音楽には誰もが聞き惚れ動きを止めてしまう。彼の音楽はそうしたものだった。
 だが彼は何があっても剣も槍も持たない。そのことについてだ。
 彼を愛する者達も怪訝な顔で問うのだった。
「何かあれば大変なことになります」
「世の中どういった人間がいるかわかりません」
「魔物もいます」
 そうした剣呑な存在のことを彼に話すのだ。
「それでも武器はですか」
「持たれないのですか」
「武器は好きではありません」
 これがオルフェウスの返答だった。巻いた金髪に緑の澄んだ目、顔立ちは女性的であり睫毛が長い。背はあまり高くなく身体つきも華奢だ。まさに剣なぞ持ったこともない感じである。
 その彼がだ。言うのである。
「ですから」
「しかしそれではです」
「何かあればです」
「危険です」
「それでも宜しいのですか?」
「はい」
 それでもだと。あくまで言う彼だった。
「それに私には不要のものですし」
「不要!?」
「不要ですか」
「武器が」
「はい、不要です」
 また言う彼だった。
「そうしたものは不要です」
「あの、武器は己の身を守る為のものです」
「それが不要とはです」
「とてもそうは思えませんが」
「それでもですか」
「私には音楽があります」
 今度は微笑んでこんなことを言うオルフェウスだった。
「ですから」
「大丈夫なのですか!?」
「音楽で」
「竪琴と歌で」
「戦いだけではありません」
 優雅な微笑みだ。まさに戦いを知らない者の微笑みだった。女性的なものさえ感じさせる微笑みでだ。彼はまた言うのだった。
「ことを収める手段は」
「そうでしょうか」
「やはり武器と思いますが」
「それでもですか」
「はい、私はそう信じています」
 こう己を愛する者達に話すのだった。彼はあくまで武器を持とうとしなかった。
 その彼がある日だ。友人の結婚式に招かれた。彼の幼い頃からの友人でありその式においてその竪琴と歌も披露して欲しいというのだ。
 その話を聞いてだ。彼は笑顔で言うのだった。
「では」
「来てくれるのかい?」
「喜んで」
 その優雅な微笑みで答える彼だった。
「そうさせてもらいます」
「そうか。それは有り難い」
「では。その日に」
「うん、君も楽しんでくれ」
 こんな話をしてであった。彼はその結婚式に招かれた。式は街の外れでわれそこにだ。オルフェウスも赴いたのである。
 席が設けられそこに葡萄の美酒や牛の肉を焼いたもの、それにパンに果物といったものが並べられている。その中央にだ。
 彼の友人と美しい花嫁が着飾ってそこにいる。その彼
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