暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
五十八 〜交錯する思惑〜
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 胸が当たっているが、本人は気にする素振りも見せぬ。
「なあ。その中に……ウチも混ぜてくれへんか?」
「……即答は出来ぬな。皆に確かめねばならぬ」
「けど、ウチは歳っちを独り占めするつもりはあらへんよ? せやから、な?」
 そう言って、霞は腰を浮かし……接吻をしてきた。
 生暖かい酒が、口移しに流れ込んでくる。
「霞。……何をしようとしているのか、承知の上であろうな」
「……こないな事、酒の勢いだけでやれる程、ウチは阿呆やないで?」
「……良かろう。参れ」
 私は、霞の身体を抱き締めた。
 かすかに、震えているようだが……。
「無理はするな」
「……ええねん。ウチな、歳っちが好きや、これはホンマもんの気持ちやから」
「…………」
 もう、言葉は要らぬであろう。
 今はただ、霞の気持ちに応えるのみだ。


 翌朝。
 迎えに来た疾風に、事の次第を告げた。
 ……盛大に溜息をつかれる結果を招く事になったが。
 一部が朱に染まった夜具を見た何進は苦笑し、月は耳まで真っ赤になったのは、また別の話。
「今更ではありますが……。仕方ないでしょう、歳三殿程の御方、惹かれない方がどうかしてますからね」
「せや。……ただ、愛紗達に話さなあかんやろ? それはちょーっと気が重いんやけどな」
 全く異なる意味合いで、霞は溜息を一つ。
「だが、これは不文律。私も後で皆に話さねばならぬ」
「英雄色を好む、とは言うが……やはり土方、貴公は尋常ではないな」
 ……何進の呟きに、返す言葉はない私であった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ