第一部
第五章 〜再上洛〜
五十八 〜交錯する思惑〜
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胸が当たっているが、本人は気にする素振りも見せぬ。
「なあ。その中に……ウチも混ぜてくれへんか?」
「……即答は出来ぬな。皆に確かめねばならぬ」
「けど、ウチは歳っちを独り占めするつもりはあらへんよ? せやから、な?」
そう言って、霞は腰を浮かし……接吻をしてきた。
生暖かい酒が、口移しに流れ込んでくる。
「霞。……何をしようとしているのか、承知の上であろうな」
「……こないな事、酒の勢いだけでやれる程、ウチは阿呆やないで?」
「……良かろう。参れ」
私は、霞の身体を抱き締めた。
かすかに、震えているようだが……。
「無理はするな」
「……ええねん。ウチな、歳っちが好きや、これはホンマもんの気持ちやから」
「…………」
もう、言葉は要らぬであろう。
今はただ、霞の気持ちに応えるのみだ。
翌朝。
迎えに来た疾風に、事の次第を告げた。
……盛大に溜息をつかれる結果を招く事になったが。
一部が朱に染まった夜具を見た何進は苦笑し、月は耳まで真っ赤になったのは、また別の話。
「今更ではありますが……。仕方ないでしょう、歳三殿程の御方、惹かれない方がどうかしてますからね」
「せや。……ただ、愛紗達に話さなあかんやろ? それはちょーっと気が重いんやけどな」
全く異なる意味合いで、霞は溜息を一つ。
「だが、これは不文律。私も後で皆に話さねばならぬ」
「英雄色を好む、とは言うが……やはり土方、貴公は尋常ではないな」
……何進の呟きに、返す言葉はない私であった。
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