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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
五十八 〜交錯する思惑〜
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「その事だが、西園八校尉は有名無実のものとなりそうだ」
「どういう意味ですかな?」
「元々、先帝の強いご希望で作られた制度と官職。だが、今上陛下が、同じくそれを望んだ訳ではない。勅令を取り消す者がおらず、そのまま発令されただけの事だ」
「しかし、我らはこうしてこの地に参り、叙位を受けておりまする」
「無論、それは奴らもわかっている。だがな、奴らの言い分は、俺が大将軍の座にあるのに、陛下直属の親衛隊を新設するのは、軍が二重権力となる。それは好ましくない、そういう事らしい」
 一見、理に適っているようにも聞こえる。
 だが、所詮は何皇后らに力を与えぬ為の方便に過ぎぬ。
 その為に、位置づけが曖昧な我らが俎上に載せられた、という訳か。
 本来ならば、何進を追い落としたいのであろうが、失脚させるだけの名目が何進にはない。
 黄巾党の残党こそまだ蠢動しているが、理由としては如何にも弱い。
「しかし、任ぜられた者が、いくら新たに勅令を出そうと、果たして納得しますかな?」
「そこなのだ。内々に調べさせているのだが、どうやら新たに叙位を行う事で、宥めるつもりらしい」
「では、賜った官職は一度返上させる、と」
「そうだ。蹇碩はともかく、それ以外は皆新たに州牧に封じるつもりのようだぞ」
「……成る程。再び地方に追いやろうという訳ですな。しかし、州牧は軍権を持つ身。中央の命に従わぬ軍閥と化す危険もござるな」
「宦官共は、それでも良いのであろう。とにかく、この洛陽より敵対する可能性のある連中は全て遠ざけ、その間に俺や妹を追い落とせばそれでいい、そんなところだろう」
 何処までも、性根の腐りきった連中だ。
 庶人がどれほど苦しもうと、己らの権力欲と栄華さえあればどうでも良いのであろう。
「当然、その動きは妹も知っている。それで、貴公に接触を図ろうとしたようだな」
「そこがわかりませぬ。何故、拙者なのでござるか? 筆頭の蹇碩殿はやむを得ぬとしても、他にも袁紹殿や鮑鴻殿もおられます」
「そら、当然ちゃうか?」
 それまで黙っていた霞が、重々しく口を開いた。
「どういう事だ?」
「まず、歳っちは月と父娘の間柄やろ? つまり、歳っちが味方につけば、当然月も従う。そう考えるのが普通やな」
「確かに、軍の規模ではかなりのものになるな」
「せやろ? それだけやない、歳っちは何より、黄巾党征伐で最大の武功を挙げたちゅう実績がある。目を付けへん方がどうかしとるで」
「ふむ」
「それに、今本拠にしとるギョウは、洛陽に近いやんか。仮に洛陽におられんようになっても、駆けつけるには十分な距離や」
 霞の挙げた理由は、いちいち理に適っている。
 流石は張文遠、という訳か。
「だがな、土方」
「は」
「俺としては、貴公を巻き込むつもりもないし、また貴
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