第一部
第五章 〜再上洛〜
五十七 〜英雄、集う〜
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些か、機嫌を損ねたような口ぶりだ。
……全く、女子の扱いは殊更難題だ。
戦場の方が、どれほど気楽かわからぬな。
広小路を進み、宮城前に到着。
「さて、此所からは私達だけね」
私も疾風と別れ、宮城の門を潜る。
そこに、迎えの使者が待ち構えていた。
「皆さん、お待ちしておりました」
よもや、月自ら参るとはな。
他の者も同様のようだが……馬騰だけは違う反応を見せた。
「よっ、月。久しぶりだな」
「ふふ、翡さんは相変わらずですね」
「月こそな。案内、宜しく頼むわ」
「はい。お父、いえ土方さん、曹操さんに袁紹さん。どうぞ此方へ」
「董卓さん? 今、土方さんを何と呼ぼうと?」
聞き咎めたのか、袁紹が眉を寄せる。
「あ、いえ。失礼しました」
「董卓さん。わたくしは、何を仰ろうとしたのかと」
「……麗羽。既に宮中よ、控えなさい」
「華琳さんは黙っていて下さい! わたくしはですね」
袁紹は、すっかり頭に血が上ってしまっている。
……とにかく、この場を収めねばなるまい。
「袁紹殿。宜しいか?」
「土方さんまで……。い、いいですわ、伺いましょう」
「うむ。月の事だが、今は故あって、父娘の契りを結んでいるのだ」
私がそう言った途端、みるみるうちに、袁紹の顔が青ざめていく。
「本当に? 本当に、そうなんですの?」
「何だい、袁紹は知らなかったのかい? あたしんトコみたいな僻地でさえ、知らされてるぜ?」
「勿論、私も知っているわよ。麗羽、知らぬは貴女だけみたいね」
「そ、そんな……」
へなへなと、その場で膝をつく袁紹。
「申し訳ありません、お父様。私のせいで……」
「月、お前は何も悪くない。既に公にしている事だ、公私を混同せねば、お前がいつも通りに呼ぶ事は構わぬ筈だ」
「ですが……」
「気にするでない。父の申す事が聞けぬか?」
「……いえ。わかりました」
漸く、月はいつもの柔和な笑みを浮かべた。
それにしても袁紹は、何故月の事でこれ程までに衝撃を受けたのであろうか。
……わからぬが、言える事は袁紹が未だ、立ち直る気配が見えぬ事だ。
「さて、陛下がお待ちかねであろう。ご一同、参るぞ」
「ああ、だな」
「そうね、行きましょう」
馬騰と華琳は応えるが、袁紹は未だ、茫然自失のままだ。
だが、顧みるような真似はせぬ。
その代わり、背を向けたまま一言だけ、申しておく。
「誰も、手を貸せぬし貸さぬ。今がどのような時か、それを考えられよ」
謁見の間にて、叙位の時を待つ。
睡蓮の他、見知らぬ男が二名。
確かめた訳ではないが、蹇碩と、淳于瓊であろう。
袁紹は、遅れながらも叙任の場には姿を見せていた。
そして、玉座には、一度だけ宮中で見かけた弁皇子
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