第一部
第五章 〜再上洛〜
五十七 〜英雄、集う〜
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くとも、戦場では今の髪型の方が動きやすかろう」
「そ、そうですわ。名家である袁家当主のわたくしに相応しい装いにしただけですわ、お、おほほほほ」
と、華琳と馬騰が、揃って溜息をつく。
「……麗羽。無理しない方がいいんじゃない?」
「あたしも同感だな」
「な、なんですの、華琳さんも馬騰さんも! 土方さん、参りましょう!」
ずんずんと、袁紹は歩き出す。
ふむ、身のこなしが軽く感じられるようになっただけでも、髪型を変えた効果はあるのかも知れぬな。
勅使から、供は十名まで、ただし宮城には当人以外、入る事は罷り成らぬ……そう、通達されていた。
華琳は流琉、袁紹は顔良、馬騰は鳳徳を伴うようだ。
「疾風(徐晃)、お前が供をせよ」
私は即座に決を下した。
「はっ」
……が。
「ご主人様、私では不足ですか?」
「そうなのだ。お兄ちゃんを守るのは、鈴々の役目なのだ!」
……こうなる事が明白だった故、敢えて皆に諮らなかったのだが。
「留守を守るのも大事な務め。それに今の洛陽は平穏だ、無用に警戒するまでもあるまい?」
「それはそうですが……」
まだ、不服なのであろうな。
「申したい事があれば後にせよ。それと、星」
「はい」
「霞を、頼んだぞ?」
「お任せ下さい」
以心伝心、後は任せるとする。
……霞はどうやら、天幕から出てこぬようだ。
「ではではお兄さん、風はご指示通りにやっておきますねー」
「歳三様、行ってらっしゃいませ」
皆の見送りを受けて、陣を出た。
「ふ〜ん、噂に違わないって事かねぇ?」
「……馬騰殿。何か?」
「いやね、土方の許には人材が集まってる、そう聞いていたからさ。てっきり、あたしは女たらしなのかと思ったけど」
「それは違うわ、馬騰。この時代、女より優れた男なんて、砂漠で金を探すよりも困難。貴女なら、よくわかっているわよね?」
「まあね。まだ少ししか見てないけど、土方はそれだけの器量を備えてる、それはわかってきた」
「あら、その程度で土方さんを理解できたおつもりとは、馬騰さんもまだまだですわね」
妙に勝ち誇ったように、袁紹が言う。
「なんだと?」
「そういう麗羽だって、歳三との付き合い、そんなに長い訳でもないんじゃない? この中じゃ、私が一番長い筈よ」
「華琳さん。わたくしは同じ冀州で、共に郡太守だったのですよ? あなたなどより、接点は多いですわ」
三者の間で、妙な火花が飛び散り始めた。
流琉や鳳徳、顔良らは……ただ狼狽するばかりだ。
一方の疾風は、落ち着いたものだがな。
……と思いきや、三人の争いを傍目に、呟いている。
「罪作りですな、歳三殿は」
「……私は、何もしておらぬぞ?」
「ええ、確かに何も。ですが、何もしなくても罪作りです」
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