第一部
第五章 〜再上洛〜
五十七 〜英雄、集う〜
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だが、霞の狼狽ぶり、尋常ではない。
「鈴々。目を離すな、良いな?」
「合点なのだ!」
私は頷くと、霞を連れて天幕を出る。
「霞。顔見知りのようだな?」
「……やっぱ、誤魔化すんは無理やね」
「あれだけはっきり顔に出せば当然であろう。それで、あれは何者なのだ?」
だが、霞は何やら躊躇ったまま。
「言えぬか?」
「…………」
私の問いにも、ただ頭を振るばかり。
「ならば、無理にとは申さぬ。だが、あのままにしておく訳にはいかぬ、それだけは申しておくぞ」
「わかっとる。……少し、考えさせて貰えへんか?」
「良かろう」
「……済まんな、歳っち」
霞は、肩を落としたまま、星の待つ天幕へと歩いて行く。
……とりあえず、正体不明からは一歩前進か。
後は、霞を信じるよりあるまい。
数刻後。
示し合わせた訳ではないのだが、華琳と袁紹の両者から、打ち揃っての入城を、と誘いが届いた。
断る理由もなく、応諾の返答をした矢先。
「申し上げます。馬騰様よりの使者が、お目通りを願っております」
慌ただしい最中、だが断るのも非礼に当たる。
「わかった。通せ」
「はっ!」
程なく、使者が姿を見せた。
「目通り、感謝するぞ。あたしが馬騰だ」
……この世界は、君主自ら出向くのが普通なのか?
華琳も睡蓮(孫堅)もそうであったが、公儀では考えられぬ事だ。
そして、やはり馬騰も女であった。
すらりと背が高く、それでいて年齢を感じさせぬ人物だ。
隣にいる少女は、そんな馬騰を見て肩を竦めている。
どう見ても武官のようだが……かなり遣うな。
「拙者が土方にござる。お初に……」
と、馬騰は手を振る。
「ああ、堅苦しいのはなしで頼むわ。これからは同僚なんだし、あたしもそういうのは性に合わないんだ」
「……良かろう。貴殿がそれで構わぬのなら」
「そうそう、そんな調子で」
馬騰は、何度も頷く。
「で、コイツは……ああ、自分で名乗れ」
「翡様、また面倒になっただけでしょう?」
呆れたように言う少女。
「いいじゃんか、別に」
「全く……。コホン、失礼しました。自分は鳳徳と申します、お目通りいただき、改めて御礼申し上げます」
鳳徳……成程な。
身のこなしに隙がないのも当然か。
関羽と五分に打ち合ったと言われる豪傑、恐らくはこの者も並の腕ではあるまい。
「丁重な挨拶、痛み入る」
「いえ。自分こそ、噂の御方にお会いできて光栄です」
「お、何だ立子一目惚れしちまったか?」
馬騰がからかうとに、鳳徳は忽ち、顔を赤くする。
「翡様! し、失礼ですよ! 自分はただ、武人としてですね」
「あ〜、わかったわかった。そうムキになるなって」
何と
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