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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
黒守黎慈とフェンサー(3) ─譲れないモノ─
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「それで、マスター? お聞きしたいことがあるんだけど?」

 新都にあるホテルの一室。
 イリヤとバーサーカーによる襲撃を受けた今夜、冬木町にある家に帰るのは若干不安だということで郊外のホテルの一室に泊まることになった。
 革ジャンを失ったことで、このクソ寒い冬の夜中に薄着でチェックインしに来た客を、不審な目で見つめるホテル従業員の目が痛かった。

 ついでにさっきヘッドバットされたせいで鼻も痛い。
 部屋に入るなり、何故か正座を強いられて足も痛い。

 主従関係の逆転現象が今ここに。

「私が知る限り、バーサーカーとそのマスターである少女との接触は最初の夜の一度だけだったのだけれど。
 あの子のレイジへの態度を見ると、どうも腑に落ちないのよね。貴方、私の知らないところで狙われるようなことでもしたの?」
「……コミュニケーション等を少々…………」

 そういえば俺がイリヤと出会った時、いつもフェンサーは居なかったのか。
 別行動をしている方が珍しいくらいだが、たまたま状況が外れた……あるいは重なった結果か。
 俺自身イリヤとは何度か話した程度で、世間話の範疇を出ないような会話しか交わしていないと思っていた。

 ただ互いに魔術師で、聖杯戦争の敵同士で、特殊な立場といえばその通りだ。

 得られた情報から推察するにかなり偏った環境で育ったようだが、魔術師とは得てしてそういうものだ。イリヤだけが特別な訳ではない。
 だからこそ彼女が俺などに興味を抱き、襲撃を仕掛けてくるなど想像もしていなかったわけなのだが。

「ということは、私の居ないところでバーサーカーのマスターと接触があったということ?」
「そうだな。昼間に何度か会ってる。特に示し合わせた訳でもなく偶然出会っただけで、そのときは戦いにはなっていない」
「何でそのことについて私に言わなかったの!」
「ぅおっ!? いやごめんっ、あまり重要な話をしたわけでもなかったから……!」

 イリヤと出会っていたことについて、フェンサーがここまで過剰な反応をするとは思っていなかった。

 会話の節々で有用な情報を得られた、交換できたならば話していたかもしれないが、実際には本当に世間話程度のことしか話していない。
 マスターとしてではなく一個人としてお喋りをしただけ、だからわざわざ話すようなことではないと無意識に考えていた。

 確かに彼女は仮にもバーサーカーのマスターなのだ。
 何もなかったとしても接触があったことは、相棒であるフェンサーに一言入れておくべきだったかもしれない。

「でも無事ってことは、向こうもバーサーカーは連れていなかったんでしょうね。貴方は話をしただけと言っていたけれど、興味を引くような事でも漏らしたのかしら」
「わからねえ
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