暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
黒守黎慈とフェンサー(3) ─譲れないモノ─
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のねマスター、信頼を置いて頂けるのは嬉しいけれど」
「俺はおまえのこと、結構好きだからな。変にわだかまりなんて抱えたくない」
「──────」

 きょとんとした顔で閉口する。
 なんだ、今の言葉はそんなに予想外だったのか。

 今まで色々言い合ったりしてきたが、彼女の事は好ましいと思っている。
 だからこそ嫌われたくはないし、互いに信頼し合える間柄でありたいと思うのは当然だ。
 マスターとサーヴァントであることは関係なく、一人の人間として接する上での素直な気持ちだ。

 主従の役割だとか魔術師と使い魔の関係性だとか、そんな側面で見れば余分でしかないだろうが、俺が大事にしたいのはそういう余分(・・・・・・)こそをである。
 戦闘であればそんな余分を排除するのも致し方なしと割り切れるが、普段の生活全てからそれらを無くすのは黒守黎慈としての死を意味しているも同じだ。

 彼女もまさか現界している時間全てを戦闘思考に費やしているなんてことはあるまい。
 聖杯戦争の為に呼び出されたのは理解しているが、日常における彼女は機械や人形などではなく、意思ある人間として振舞っている。
 戦闘での勝利、聖杯獲得こそがサーヴァントとしての本分なのだとしても、彼女が人間である限り俺は彼女のそういう余分(・・・・・・)を尊重したい。

「ええ。私もレイジのそういうところ、好きよ。でも、いずれ私の譲れない部分と貴方の譲れない部分が衝突する。そのときも同じことを言えるかしら」
「そうならないように話し合っていこうっつってんの! 不満溜め込んで爆発なんてしないように!」
「不満なんてないわ。今まで意見は交わしても、お互い納得して方針を決めてきたでしょう?」

 清々しい表情で答えるフェンサー。

 今までも納得して付き合ってきたし、これからもそうだと言わんばかりに。
 いつか衝突するといった譲れないモノ、それがぶつかるまではきっと今のままの信頼関係を保ったまま戦っていけると。

 彼女が言った譲れないものを、その時までに知っていること。理解していることが必要なのだろう。
 

「その譲れない部分ってのは……何なんだ」
「私が聖杯戦争に参加した動機、そもそもの願望よ。きっとレイジは、その願いを否定する。いいえ、願いの叶え方をこそ否定するでしょうね」
「それは…………」

 彼女の叶えたい願いだと言うのならば、俺にとっても大切なモノだ。

 今日まで接してきて、邪悪な願いを抱くような人物でないことは確信している。
 卑怯な話だが夢で彼女の記憶を覗き見たこともある……きっとあの青年か自身に関する何かを望んでいるのだと思う。

 それならば俺が否定するようなものじゃない。
 たとえ倫理に反する死者蘇生のような願いだ
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