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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
黒守黎慈とフェンサー(3) ─譲れないモノ─
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殺を誇る宝具を持つランサーならば戦いを焦ることもない。

 やはり今すぐ行動を起こすのは得策じゃない、か。

「キャスターについても凛と士郎に一任しているし、しばらくは様子見だな」

 手を出すなと言われているのだから、今のところは任せておけばいい。
 セイバーとアーチャーが消えるという最悪の状況を想定しても、キャスターとバーサーカーはいずれ衝突する。
 その時まで身を隠し、要はこちらから手を出すタイミングを間違わなければ、優位に立って戦略を広げられる。

 漁夫の利という言葉ほど上手く行くかは分からないが、今すぐにフェンサーと誰かに仕掛けに行くよりは勝算は高い。

「そうね。ところで……マスターに聞いておきたいことがあるわ」
「ん? なんだ?」
「貴方は戦略上におけるマスター殺しについて、どう考えているの?」

 どういう意図の質問なのか。

 既に俺は友人でもあった間桐慎二という、ライダーのマスターを殺している。
 それも戦略上という理由は薄く、魔術師としてのルールを破ったからという理由でだ。

 絶対に殺さなければならないことはなかったかもしれない。
 あの瞬間にサーヴァントを失っていた以上、慎二は聖杯戦争を脱落したに等しい。
 魔術師としての知識はあっても魔術回路がなく、知識以上に手段として何も出来ない一般人同然だった人間をだ。

 無関係の人間を巻き込んだのが許せない────そんな正義感ぶった理由で手を下した訳じゃない。

「積極的、ではないと思う。慎二……ライダーのマスターを一度見逃したことからもわかるとは思うが。
 必要に差し迫られなければ殺したくはない。戦略上におけるマスター狙いも、殺す前に制圧し令呪の放棄、剥奪を目的としてる」
「恐らくアーチャーのマスターや、セイバーのマスターもそんな感じでしょうね。それじゃあ、ライダーのマスターを殺すに至った理由は?」

 戦略上におけるマスター殺害でないのなら、慎二を殺したことには理由がある。

 それはそうだろう、理由なき殺人など人間の所業ではない。
 獣ですら生きるためという理由で狩りをするのだ。快楽だの娯楽だのといった殺人も論外である。

「端的に言えば、責任があったからだ」
「責任?」
「例えになるかは分からないが、狩人が獅子を狩ろうとしたけど、情けをかけたりで結局命を奪わなかったとする。
 仕方がなしに牙と爪を抜いて無害だと野に放ったのに、その後獅子が近くの村の住民を襲ったとしたらそれは狩人に責任がある」
「へえ。それはライダーのマスターを揶揄してるわけね」
「お察しの通り。元の話に戻すと、慎二は獣ではなく人間だ。無関係の人を巻き込んで死ぬかもしれない目に遭わせるってのは、相応の責任を負うべき行いだろう。
 ん
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