第十五章 忘却の夢迷宮
プロローグ 再会は死の香りと共に
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凛。怯えを露わにする士郎を無視し、周囲をぐるりと見渡した凛は、そっと頬に手を添え小首を傾げると、いかにも「困っています」と言わんばかりに小さく溜め息を吐いた。
「ごめんなさい、衛宮くん。実は私少し困っているのです」
「………………な、何がだ?」
思わず士郎、腰を落とし重心を低く(逃げやすい体勢を)する。
「この方達と……」
もう一度ぐるりと視線を巡らし、遠巻きにこちらに視線を向けてくるルイズたちを視界に捉えた凛は、ニッコリと絵に描いたような優雅な笑みを浮かべ士郎を見下ろした。
そう、見下ろす。
士郎は凛よりも頭一つ分以上に背が高い。
しかし、確かに見下ろす、との言葉が合う目で凛は士郎を見つめている。
慈愛に満ちた柔らかく細められた目で………………しかし、その目の奥は―――笑っていない。
冷え切っている。
北極など目ではない程に冷え切っている。
まさに絶対零度。
「………………エミヤクンとの関係が」
局地的なブリザードが起きた。
―――ひぃっ
悲鳴さえ上げられないとばかりに、周囲から何十と息を呑む鋭い音が響き渡った。
眼前の士郎―――息さえ出来ないでいた。
「………………お察しの通りです」
逆らうな―――ッ!!。
言い訳は死を意味すると、士郎はその夥しい死線から得た経験により直感する。
「お察しの通り? あら、何がですか?」
口元に手を当てた凛が上品に嗤う。
「分かっているだろ」とその場にいる全員が思った。
だが、それを口にする者は一人としていなかった。
………………いるはずがない。
いたとしてもそいつは唯の自殺願望により頭が残念になったものだろう。
そう、それは勇気ではなく、唯の蛮勇、無謀でしかない。
しかし、ここで何もしなければ結局の所何も変わらないのである。
そう、ここは強気でいかなければ。
引けば死、押せば死。
どちらを選んでも死。
ならば最後は男らしく堂々と。
そして、士郎は―――
「そ、そうだな、ま、まあ、その……お、男と女の、その、か、関係、と、い、言えばいいのか……」
―――ヘタレた。
「そうですか……ですが、あちらの方は、その、随分とお小さいですが」
「………………そ、そう、だな」
「あらあら……あら? もしかして、あちらの青い髪の子もですか?」
「―――ッ」
息を吐くことも吸うことも出来ない。
ぱくぱくと水槽の中の金魚のように口を動かす事しか出来ない。
完全に呼吸困難である。
しかし、誰も助けてくれない。
「どうなん、ですか?」
笑顔が迫る。
妙に陰影がある笑みが……。
しかし、逃げられない。
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