番外25話『志半ば』
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ぶん幼い子の声。
見聞色を使えるらしい。
「俺を……そこに連れてけ!」
ダメだ。
いくらルフィでもだめだ。
体を動かせ目を動かせ口を開け体の感覚を復活させろ。
俺じゃなきゃ勝てない。
「……ま」
声が出た。目が開いた。ナミの顔が頭上にある。ルフィたちと会話していて、俺には気づいていない。
いける? いける!
自問自答してる場合じゃない。
いけ!
そうだ、行かなきゃならない。
「……っ」
あれ?
声が出なくなった。
また、いつの間にか世界が暗い。
あぁ、今の、目を開けて声を絞り出すという、たったそれだけの、ほんの僅かの動きで遂に体力が空になったらしい。
どんどん世界の暗闇が濃くなっていく。
立たなくちゃならない。
止めなくちゃならない。
俺がいかなくちゃならない。
なのに。
「ロビン……動いても大丈夫なの?」
「ええ……せめて私たちは上層へ……何とか脱出を」
そんな、ナミとロビンの声が最後だった。
また俺は負けてしまった。
澄んだ空気に鳴り響く。
そこに刻まれた音は何百年という歳月に散った、何百何千もの命の重み。
無念。
無念。
無念。
シャンディアの想い。
クリケット家の想い。
そこに住まう動物たちの想い。
それらの一切合切をまとめてその身に染みこませてまでも、それでもなおも沈黙を守ってきたそれ。
――黄金郷は空にあったんだ。
麦わら帽子の少年が、遂に鳴り響かせた。
去る都市の栄華を誇るシャンドラの灯。
戦いの終焉を告げる島の歌声。
400年の時を経て鳴る約束の鐘。
黄金の鐘。大鐘楼。
それはただひたすらに、幾重にも折り重なって鳴り響いていた。
「……」
その音を、ハントは無意識のどこかで聞いていた。
「うわ、ハントとワイパーっていうこのゲリラ! どっちもえらいこっちゃ!」
全てが終わったそこで、チョッパーが新たな戦いに取り組もうとしていた。
エネルの狙いは黄金の鐘。
黄金の鐘という言葉で、思い出した。
『なー、おい。黄金郷にはでっけぇ鐘があんだよな! そのでっけー鐘を鳴らしたらよ、下にいるひし形のおっさんやサルたちに聞こえねぇかなー……なぁ、聞こえるよな!』
大きな蛇が出る前、まだ一緒に行動していた時にルフィが言っていた言葉だ。
きっと聞こえる。
心の中でそう思っていた。
そして、俺はその音を聞いた。
全てを晴らすようなそんな綺麗な鐘の音を。
ああ、またルフィは勝ったんだ。
鐘の音が聞こえただけでそう思った。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ