暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外25話『志半ば』
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ぶん幼い子の声。
 見聞色を使えるらしい。

「俺を……そこに連れてけ!」

 ダメだ。
 いくらルフィでもだめだ。
 体を動かせ目を動かせ口を開け体の感覚を復活させろ。
 俺じゃなきゃ勝てない。

「……ま」

 声が出た。目が開いた。ナミの顔が頭上にある。ルフィたちと会話していて、俺には気づいていない。

 いける? いける!

 自問自答してる場合じゃない。

 いけ!

 そうだ、行かなきゃならない。

「……っ」

 あれ?
 声が出なくなった。
 また、いつの間にか世界が暗い。

 あぁ、今の、目を開けて声を絞り出すという、たったそれだけの、ほんの僅かの動きで遂に体力が空になったらしい。
 どんどん世界の暗闇が濃くなっていく。
 立たなくちゃならない。
 止めなくちゃならない。
 俺がいかなくちゃならない。

 なのに。

「ロビン……動いても大丈夫なの?」
「ええ……せめて私たちは上層へ……何とか脱出を」

 そんな、ナミとロビンの声が最後だった。

 また俺は負けてしまった。




 澄んだ空気に鳴り響く。
 そこに刻まれた音は何百年という歳月に散った、何百何千もの命の重み。

 無念。
 無念。
 無念。

 シャンディアの想い。
 クリケット家の想い。
 そこに住まう動物たちの想い。
 それらの一切合切をまとめてその身に染みこませてまでも、それでもなおも沈黙を守ってきたそれ。

 ――黄金郷は空にあったんだ。

 麦わら帽子の少年が、遂に鳴り響かせた。
 去る都市の栄華を誇るシャンドラの灯。
 戦いの終焉を告げる島の歌声。
 400年の時を経て鳴る約束の鐘。
 黄金の鐘。大鐘楼。
 それはただひたすらに、幾重にも折り重なって鳴り響いていた。

「……」

 その音を、ハントは無意識のどこかで聞いていた。

「うわ、ハントとワイパーっていうこのゲリラ! どっちもえらいこっちゃ!」

 全てが終わったそこで、チョッパーが新たな戦いに取り組もうとしていた。




 エネルの狙いは黄金の鐘。
 黄金の鐘という言葉で、思い出した。

『なー、おい。黄金郷にはでっけぇ鐘があんだよな! そのでっけー鐘を鳴らしたらよ、下にいるひし形のおっさんやサルたちに聞こえねぇかなー……なぁ、聞こえるよな!』

 大きな蛇が出る前、まだ一緒に行動していた時にルフィが言っていた言葉だ。
 きっと聞こえる。
 心の中でそう思っていた。

 そして、俺はその音を聞いた。
 全てを晴らすようなそんな綺麗な鐘の音を。

 ああ、またルフィは勝ったんだ。
 鐘の音が聞こえただけでそう思った。


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