エピソード30 〜盗まれたデッキ 前編〜
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状況の中で、三沢が声を上げる。
「待ってくれ!あいつに……、神楽坂にチャンスをやってくれないか!」
「別に……チャンスも何もあいつはレプリカとは言え、デッキを盗んだ屑だぞ?そこのどこに温情をかけろと?俺はそこまで心は広くないぞ?」
冷たく返すが、三沢は一歩も引かず寧ろ頭を下げて頼み込んでくる。
「あいつは……本当はこんな事するやつじゃないんだ!ただ思うようなデッキが組めなくて焦ってたんだ。」
「は?」
「神楽坂は異様な記憶力が取り柄で、ありとあらゆるデュエリストを研究し尽くしてついには言動だけじゃなく、プレイングや感性までコピーできるようになったんだ。だが記憶が良すぎる故に作るデッキが毎回誰かのデッキに似てしまい、あいつが作りたいデッキにならないんだ。」
「そりゃ凄いな。けど、それと今は関係ないよな?」
「あぁ。だが、あいつにも悩みがあった、ということは汲んでもらいたい。頼む、この通りだ。」
「……三沢。」
深々頭を下げ、請いてくる三沢に流石に紫苑もやりすぎたと思ったのか苦笑いを浮かべる。
流石に、俺も頭下げられてそれを足蹴にできるほど歪んではないぞ……。
「はぁ……お前もいい友達持ったな。三沢に免じてチャンスくらいは与えてやる。その代わりに、負けたら潔くデッキを返せ。」
「っ……あぁ、わかった。」
神楽坂も友人がわざわざ頭を下げた事は堪えたのか、了解の意を示す。
「さて、結局決闘する事になったわけだが……。十代、代わりたければ代わるぞ?」
「いや、今俺に振るなよな……。今回は紫苑に譲るぜ。その代わり、今度決闘しような!」
「ん、その時は嫌と言うほど虐めてやるよ。」
軽く勢いをつけて近くの岩場へと飛び乗ると翔から決闘盤を投げ渡してもらい片手でキャッチすると左腕へと装着する。そして、デッキケースからデッキを取り出す際にふと手が止まる。何のデッキを使おうか、と。
いつものようにナチュルでもいいけどな。偶には、使ってやらないとこいつら、不機嫌になるからな。それに相手は遊戯さんのデッキ。しかも、その実力を100%引き出せるって言うなら申し分ないだろ。
ーーー久々に暴れさせるか。
サディスティクな微笑を浮かべ、ナチュルとは違う別のデッキを掴み、セッティングする。
そして、今一度神楽坂へと向き直ると向こうは既に準備が完了しているらしい。
「さて、お前の友人が頭を下げてまでもらったチャンスだ。簡単には負けてくれるなよ?」
「っ!?その言葉そのまま返してやる!この武藤 遊戯のデッキを使ってな!」
互いに啖呵を切り、交差した視線が火花を散らす。
「「決闘!!」」
神楽坂:LP4000 紫苑:L
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