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目的の為には
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第一章

                      目的の為には
 美女と見間違えんばかりの麗しい姿の騎士がだ。そこにいた。
 見事な髪を脱色しており紫の目を持っている。その紫の目は流麗であり顔立ちは湖よりも奇麗なものである。
 そして背は高く身体つきも整っている。その彼は。
 ク=ホリンという。この国の英雄である。戦場で駆け敵をその魔術の槍ゲイボルグで倒していく。まさにこの国の救世主と言ってよかった。
 その彼にだ。ある時王が命じるのだった。
「よいだろうか」
「その地に行きですね」
「そうだ。巨人を倒してくれ」
 こう彼に命じるのである。
「フォモールをだ」
「フォモール。厄介ですね」
 フォモールと聞いてだ。ホリンの顔が曇った。
「あれは倒すとです」
「毒を撒き散らしてしまうな」
「はい、その身体は毒に満ちています」 
 それがフォモールという巨人だった。倒してもその毒で大地や人を汚してしまうのだ。そうした非常に厄介な存在なのである。
 それの征伐を言われてだ。ホリンは言うのだった。
「例え倒したとしてもです」
「その地は毒に覆われ」
「その地は誰も住めなくなります」
「そしてそこにいる者達も」
「死に絶えてしまいます」
 そうなるとだ。ホリンは王に話すのである。
「それが問題です」
「しかしだ」
 それでもだとだ。王も曇った顔で言うのであった。
「あれを何とかしなければだ」
「わかっております。より多くのものが失われます」
「そこにいるだけで大地を汚し」
 その毒によってだ。
「そして多くの民が命を奪われる」
「だから。何とかしなければなりません」
 ホリンもわかっている。そのことはよく。
「それはその通りです」
「では行ってくれるか」
「はい」
 苦い顔でだ。ホリンは王の言葉に頷いた。
 そしてそのうえでだ。王にこうも言った。
「フォモールを。必ず倒します」
「頼んだぞ。この国の為に」
「多くの民の為に」
 その為にだ。彼は毒の巨人の征伐に赴くのだった。その供に一人の若い従者がついた。従者は巨人のいる地に向かう途中で。ホリンにこう尋ねた。
「あの、今度の巨人ですけれど」
「フォモールだな」
「はい、そのフォモールの征伐ですが」
「必ず果たす」
 ホリンの決意は強い。従者が操る戦車の後ろに座ったままでだ。毅然として答えるのだった。
 既に戦う姿になっている。その手には魔槍ゲイボルグがある。その槍を手にしてだ。
 彼はだ。毅然として答えるのだった。
「この国の為、そして民の為に」
「そうですね。しかしです」
「倒せばだな」
「フォモールの毒によってその地は汚されてしまいます」
 従者もだ。王と同じことを言う。そしてその表情も同じだった。

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