第一部
第五章 〜再上洛〜
五十六 〜洛陽城外にて〜
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無論、未然に防いではいるのだが……何れも捕らえる前に逃げられているとの事。
「申し訳ありませぬ。何とか捕らえたいのですが、なかなかに相手もすばしっこいのです」
愛紗が唇を噛む。
「素性もわからぬのだな?」
「はい。夜陰に紛れての上、面体を隠しているようでして」
「ならば、泳がせてみてはどうか?」
「泳がせる、とは?」
「何度も忍び込むとあらば、余程探りたい事があるのであろう。ならば、探らせてやれば良い」
「ですが……。ご主人様に危害を加えるような輩の可能性もあります」
「愛紗。私は己を過信するつもりはないが、少なくとも易々と刺客如きの手にかかるつもりはないぞ」
「ふむ。ならは主、私が傍に控えると言うのは如何ですかな?」
星がさらりと言うと、案の定と申すか……我も我も、と相成った。
私を気遣っての事ではあろうが……何故、風までその輪に加わるのだ?
……全く、我ながら因果な事だな。
勅使到着までは、洛陽の外にて待機する事になる。
それは袁紹や華琳も同様で、程近い場所に各々が陣を構えた。
「袁紹殿。此度の協力、感謝致す」
「いえ、お安い御用ですわ。土方さんこそ、よくぞご無事で」
私は袁紹に礼を述べるべく、陣を訪れていた。
供は連れるまでもないのだが、
「風はお兄さん分が不足しているのですよ? そんな風を見捨てるお兄さんじゃありませんよねー?」
と、強引について来ていた。
「そうそう。程立さん、これ、読んでいますわ」
と、袁紹は傍らから竹簡を取り出す。
「風、何の事か?」
「はいー。袁紹さんから、人の上に立つ為に必要な事を学びたいと言われましてですねー。風が、お薦めの書物を紹介したのですよ」
袁紹が変わろうとしている、その一端を垣間見た気がする。
だが、一口には申せぬ程、幅広く学ぶ事になるのではないか?
「成程な。だが、どのような書を薦めたのだ?」
すると、風は口に手を当て、不敵に笑う。
「それは、乙女の秘密なのですよー」
「……何だ、それは?」
袁紹を見ると、此方も意味ありげに笑みを浮かべている。
「袁紹殿も、私には教えられぬ、と?」
「ええ。程立さんと、女同士の約束ですから。いくら土方さんにもお教え出来ませんわ」
妙に意気投合したようだが……私のいぬ間に何があったのか。
……まぁ、良かろう。
袁紹がどのように変化するのか、見せて貰うだけだ。
「ところで土方さん。道中、華琳さんの処に立ち寄られたとか?」
「予定外であったが、な。渡河したところで一騒動が起き、結果華琳に捕捉されてしまったのだ」
「そうでしたの。華琳さんも、土方さんにいたくご執心と聞いてますわ。確かに、
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