第一部
第五章 〜再上洛〜
五十六 〜洛陽城外にて〜
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「見えてきたわね」
「……うむ」
二度目となる洛陽は、この時代に来てより見たどの城塞都市よりも壮大である。
華やかな頃は、さぞかし威圧感に満ちていた事だろう。
……だが今は、それは感じられぬな。
陳留やギョウの方が、軍事拠点としては優れているやも知れぬ。
「やはり、何処か斜陽の雰囲気を禁じ得ませんね」
そんな顔色を読んだか、稟が言った。
「稟もか?」
「はい」
「主ー!」
「お兄ちゃん!」
と、星と鈴々が、こちらに向かってきた。
……いや、疾風(徐晃)や風も後から来ているようだ。
そして、典韋もいるな。
「残念だけど、お迎えのようね。もう少し、貴方とは語り合いたいところだけど」
「また、機会もあろう。では、な」
「ええ」
「あ、流琉だ。おーい!」
季衣が、ぶんぶんと手を振る。
「……はぁ」
一方、典韋はガクリ、と肩を落とす。
「あれ? どうしたの、流琉?」
「季衣。……私の役目、忘れてるでしょ?」
「えーと、何だっけ?」
悪気はないのであろうが、華琳もこれには苦笑を浮かべるのみ。
「もういいわ、流琉。ご苦労様」
「やはり、典韋はお前の差し金か」
「そうよ。どうせ気付いていたんでしょう?」
やはり、悪びれもせぬか。
「ああ。だが、何故典韋のような者を遣わしたのだ?」
「さて。どうしてだと思う?」
まだ、私を試す気らしいな。
「一つは、典韋自身が優れた武人。何かあっても切り抜けられると見たのであろう」
「正解よ。でも、まだ理由があるわよ?」
「性根が素直で、疑われる危険が少ない。また物事を先入観なしで見る事が出来る……そんなところか」
「その通りよ。流琉のそんなところを見込んで、歳三を観察してくるように命じたの。歳三なら、気付いても流琉に危害を加える事はないでしょうしね」
典韋は、私に向かって、頭を下げた。
「本当に、済みません。騙すつもりはなかったのですけど」
「気にするな。お前が妙な色気を出せば話は別であったが」
「流琉がそんな事する筈ないし、余計な事はしなくていい、そう言っておいたもの。流琉、言った通りだったでしょう?」
「は、はい。土方さまも皆さんも、本当に良くしていただいて……」
「ならば良いではないか。誰も損をしてはおらぬし、な」
「……土方さま」
と、典韋は真っ直ぐに私を見据える。
「でも、せめて私の感謝の気持ちです。……以後、流琉と呼んで下さい」
「ふむ。良いのか?」
「はい」
些か、真名を許すのが安易という気もするが……魏の者は、こんな感じなのであろうか?
いや、夏侯惇や夏侯淵は違う、人によるのであろうな。
「では流琉。また、
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