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第一章
カードゲームの相手
これはイギリスに伝わる話だ。
ある貴族、この貴族の名前をさしあたってケンジントン卿としよう。ケンジントン卿はとにかくカード遊びが好きだった。とにかくカードなら何でもよかった。
中毒と言ってもよかった。それでだ。
朝も昼もカード遊びに興じていた。ポーカーでも何でもだ。
相手もだ。友人や親族だけでなく屋敷の使用人達でもだ。誰でもよかった。そんな卿についてだ。
周囲はだ。呆れながらこう言うのだった。
「もう病気だ」
「カードにしか興味がないのか」
「一体他のことについて考えたことがあるのか」
「あれでは何時か」
どうなるかともだ。周囲は話すのだった。
「破滅するぞ」
「カードによって破滅する」
「幾ら強くてもあれでは」
「カードに飲み込まれる」
「カードの中にいる何かに」
こう思いさえしていた。とにかくカード狂いだった。
そのケンジントン卿はこの日もだ。カードに興じていた。相手は屋敷の使用人達だ。友人も親戚も呼べる人間がいなくてだ。彼等を相手にしていたのだ。
しかしその彼等もだ。こう彼に言ってきた。
「すいません、これで」
「夜勤がありますので」
「失礼します」
「何、もうか」
そう家の者達に言われてだ。卿もだ。
残念な顔になる。それでだ。
彼等にだ。こう問い返したのだった。
「他に誰かいないのか」
「カードの相手ですか」
「私達の他に」
「そうだ、いないのか」
切実な顔でだ。彼等に問うたのである。
「誰かいないのか」
「しかし。もう真夜中ですし」
「今屋敷にいるのは私達だけですし」
「ですから」
「妻は友人達と旅行だ」
それに出ていたのだ。それでいない。
「息子達はそれぞれ大学だ」
「はい、そして執事のヘンリーさんもお休みですし」
「メイドの者達も今日は大抵実家に帰っています」
「それで屋敷にいるのは私達だけですから」
彼は使用人達にはいい主人だった。ただカード狂いなことだけが問題であるのだ。
しかしそのカードについてだ。彼はあくまで言うのだった。
「本当に誰もいないのか」
「何でしたらお酒を飲まれますか?」
「それでお休みになられては」
「そんな気分ではない」
しかしだった。卿はこう言ってその提案を断るのだった。
「やはり今はカードをしたい」
「左様ですか」
「どうしてもですか」
「それもポーカーがしたい」
切実になってきていた。顔も言葉も。
「是非共だ」
「しかしそれでもです」
「我々はこれから夜勤に入りますから」
「申し訳ありません」
「そうか。こうなったら」
ここでだ。彼はたまりかねてだ。こう言ったのだった。
「悪魔
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