ターン21 鉄砲水と愉快な奇術師
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まで来て、10分は、経つぞ』
「いやー、だってさぁ……すっごい入りづらいんだよね、最後に会った時はなんかすんごい生意気なこと言っちゃったし」
ぐずぐずするのがよくないのはわかってるつもりなんだけど。そんな思いを読み取ってチャクチャルさんがため息をついたのが聞こえてきたその時。
「ああもうまったく、黙って見てればじれったい!いつまで人の家の前で立ってるつもりなのさ、自分に用があるんでしょ?だったら通すから入っといでよ!」
2階の窓から声がして、門がポルターガイスト的な何かでギイィ、と軋みながら開く。どうやら、ずっと見られてたらしい。夢想や葵ちゃんもそうだけど、この人にもあの2人とは別ベクトルで敵わないなあ、と思って軽く肩をすくめる。
『マスター』
「何?」
『どんなに格好つけてもだいぶ情けないことに変わりないぞ』
「いや別にそういうんじゃないからね!?」
「んで?」
「え、えっと」
廃寮の一室。水道はとうの昔に止まってるはずなのにどこからか稲石さんが淹れてきたコーヒーが湯気を立て、僕が手土産に持ってきた蒸しパンが小皿に切り分けておいてある。お互いに全く手を付けていないのを尻目にファラオがむしゃむしゃと蒸しパンを食べる音を背後に聞きながら、真剣な顔で僕と向かい合う稲石さん。この重い空気を少しでも和らげるため、蒸しパンと一緒に持ってきた小包を取り出す。
「とりあえずこれ、童実野町のお土産ね」
「へー、あそこ名産品なんて洒落たものあったっけ。で、なにこれ」
「線香」
「………」
「線香」
聞こえなかったのかと思ってもう一度繰り返すと、すんごいジトーッとした目で見られた。せっかく無理してちょっと高いやつ買ってきたのに、なにもそんな目で見ることないだろうに。
「………」
「………?」
なぜか何もしゃべらない稲石さん。あれ、もしかして選択ミスっただろうか。幽霊へのお土産なんだからもうこれしかない!っていう勢いで買ってきたんだけど、これについても謝ったほうがいいんだろうか。
「もういいよ、うん……。悪意がないのが一番性質悪いんだけどね」
ため息をつきながら悟ったように言う稲石さん。やっぱりまずかったのか、とちょっと反省していると、それに、とさっきまでとはうってかわって心底安心したような顔でもう一度口を開いた。
「君も、もういつもの遊野清明に戻ったみたいだしね。それなら、それが一番いい。わざわざ自分たちの方でもプレゼント用意してたんだけど、もう必要ないみたいだしね」
「プレゼント?あれでも稲石さんってここから出られないんじゃ」
「ふふ、内緒。ね、大徳寺センセ」
『そうなんだニャ。でもよかったニャ、修学旅行で何人普通の生徒がいなくなるのか
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