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無欠の刃
下忍編
カンクロウ
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 回り始めた毒が脳の正常性を奪う。
 ゆらゆらと、目の前にいる男が…いや、全ての景色が蜃気楼のように揺れる。
 立っていられないほどの激痛に、彼女の体から力が抜け、握っていた大太刀を取り落とす。
 揺れる視界。眩暈。頭痛。吐き気。
 油断したら嘔吐しかねない状況。
 ぐらりと、膝から力が抜けた。
 倒れていく体は、言うことを聞かず、心もまた、言うことを聞かない。
 そんな中、彼女は当たり前のようにその人物を見た。

 なる、と。

 こんな状況でも、彼女が求めたのは弟の姿であった。
 焦点の合わない目が、ゆらゆらと彷徨い、あの目立つ金色を見つけた時には、もう、膝は地面に触れる寸前であった。
 けれど、カトナの目は見逃さず、逸らさない。
 カトナが薄れゆく意識の中で見たのは、こちらを見る、弟の、青い、青い瞳だった。
 こちらを信じきっている、あの瞳だった。いつもと変わらない、瞳だった。

 …負けられない。

 崩れ落ちかけた足に力を込める。
 必死に歯を食いしばり、こらえる。
 がくりと、いきなりこめられた力についていけない感覚と、それに呼応して痛む頭。
 けれど、耐えきる。
 あの瞳がある限り、あの子がいる限り、カトナは負けたくない。
 寸前で耐えきったカトナに驚いたカンクロウが何らかの声を上げるより前に、カトナは問いに答えた。

「…だって、格好つけたい、じゃん」
「あ?」
「あな、たが、たずね、、た」

 目の目の男は不思議そうに首をかしげた。
 何故戦うのか。なぜ負けたくないのか。何故勝ちたいのか。
 そんなもの、簡単ではないか。明確で明快で、明解ではないか。

 「弟の前、で、ぐらい、かっこいいとこ、見せたい、」

 ごぽり。
 血で染まった口が、鉄の味を感じる。
 あつくて苦しくて痛くてつらくて、けれど、それくらい耐えきってみせる。
 彼女を彼女たらしめる根源…ナルトの姉であるという自意識が、彼女を立たせていた。

 私は、姉だ。
 カトナはそう自負しながら、足に力を入れ、目の前の敵を睨み付ける。
 私はあの子よりも早く生まれた。
 私はあの子を守るために生まれてきた。
 なのに、私は自分の役目を果たせなかった。
 今度こそ、果たして見せる。今度こそ、その役目を守って見せる。


 私は、姉だ。



 私は、あの子の姉だ!!!!!


 その意識が、彼女の中にあった朦朧とした意識も何もかもを、明瞭にする。

 それは、あの子が九尾の人柱力だろうと、なかろうと、変わらない。
 そんなものは、付属価値だ。そんなものは、おまけだ。そんなものは、取るに足らない事柄だ。
 あの子が弟であることに、あの子が私の家族であることに、なんら、
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