第十五話。『妖精の神隠し』(チェンジリング)の噂
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だからな、アレは。
「……それはその、も、モンジ君が考えてよ……そしたら私は、なんでも……」
「ははっ、冗談だ! それより、夢の中の子とは平凡に、仲良くお話してだな」
真っ赤になって動揺するキリカの言葉を遮るように、『話題逸らし』を使い、話題を変えた。
「う、うん」
「それで、『次は一緒に御飯を食べましょう』って約束したよ」
「ふむふむ、なるほどね」
キリカは直ぐに真面目な顔付きに戻ると、ポケットから自分のDフォンを取り出して、 ぽちぽちと操作をした。
「はい、モンジ君」
そして、俺にそこに表示されたページを見せてきた。
「って、そんな他人にほいほい見せていいのか?」
「Dフォンの画面って、ロアか、ハーフロアくらいしか見る事が出来ないからね」
「あ、そういうものなのか」
「一般人が見ちゃったら大変でしょ?」
「そうだね。しかし、見えるのが当たり前だと感動とかはしないものだなあ、こういうのは……」
キリカの説明に納得してしまった。
幽霊が見える、見えないでテレビ番組が出来るほど大騒ぎするが、世の中にいる見える人。
俗に言う、『霊能者』の人達は当たり前のように見えているから、あの番組でドキドキしたりハラハラしたり、『なーだヤラセかー』とガッカリしたり出来ない。
『見える』側になった俺はそういった楽しみ方はもう出来ないんだな。
見える側の憂鬱感を感じつつ、俺はキリカのDフォンの画面を見た。
そこには……。
『妖精の神隠し』
妖精に魅入られた者は、少女の夢を見る。
一度目は会うだけ。
二度目は食事に誘われる。
三度目は手土産を渡される。
四度目はもう帰れない。
帰れなくなった人は忘れられる。
「……これは」
それは、まさに俺が見ている夢そのものだった。
「ピンポイントっぽいね?」
「ああ、しかしあの女の子は妖精さんだったんだね。どうりで美少女だと思ったよ」
「あははっ、もう、モンジ君ってば、さりげなーく、私の知らないところで、『都市伝説』に巻き込まれてたんだね?」
そう言いながらキリカはしょうがないなあ、と眉を下げた。
「これが、詩穂先輩が話していた方の『神隠し』かあ……」
「こっちは確実にいるだろうね、本体が」
本体。
『人喰い村のロア』である詞乃ちゃんに名前を付けた張本人、か……。
「『人喰い村』の『朱井詞乃』ちゃんは、なんで名前を付けられたのかな?」
「うーん……そうだなあ……」
人差し指を口に当てながらキリカは考え込んだ。
「一番解り易く考えるとしたら、隠れ蓑だね」
「隠れ……蓑?」
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