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101番目の舶ィ語
第十五話。『妖精の神隠し』(チェンジリング)の噂
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やかに色づいた赤い髪の色をした美少女がいて。
なんとなく……。
音央が儚い存在なら、キリカは強い存在だな、と思ってしまった。





2010年6月3日。午後18時。屋上。

キリカに連れられてやってきたのは屋上だった。
屋上から見回した夕焼けに照らされた景色は遠くまで見渡せる街が赤く色づいていて、本当に綺麗だと思えるほどだった。
と、同時に。
______黄昏が綺麗な日は、切ない気持ちにもなる。
理由はよく解らないが、郷愁(きょうしゅう)でも刺激されているのかもしれない。
そんな事を感じていると。

「まず、モンジ君の方はどんな感じ?」

屋上を囲むように設置されている柵に手をつきながら、キリカが風に吹かれた長い赤髪を押さえながら聞いてきた。
風に吹かれて、髪が靡くその横顔は……年相応以上に美しい気がして、ドキドキしてしまうほどだった。

(やっぱり……綺麗だな。キリカも……)

「うん? なあに? まじまじ〜っと見つめて」

「いや、ごめん。あまりにも綺麗だから見惚れてたよ」

「あはっ! 先輩から乗り換えちゃう?」

「ははっ、どちらも魅力的だからそれなら両方かな?」

冗談めかして、そう、俺が言うと。

「モンジ君は誘惑に弱いにゃー」

クスクスと笑うキリカ。彼女の態度はいつも通りで安心してしまう。
何故だか知らないがいつも通りのその態度を見ていると妙に安心してしまう。

(何故だ? 何故、いつも通りの態度がこんなに安心できるんだ……)

どうしていつも通りが嬉しいのだろう、と考えたら。
……いつも通りじゃない友人がいたせいで、キリカのいつも通りな態度が安心できた、という事に気づいてしまった。

音央の、あの思いつめたような表情がやっぱり気になって仕方ない。

(音央、どうしてお前は……)

「焦ってもダメだよモンジ君」

そんな俺の心を、キリカはキリカなりに気遣い、読んでくれた。
一之江とは違う。キリカの場合『人間観察』による気遣いだ。
それが、つまり彼女の優しさという形になっている。

「んー……そうだね。今、音央を追いかけても混乱させるだけか」

「そういう事。モンジ君ってば、やっぱり女の子には優しいね?」

「苦しそうだったんだ。苦しそうな顔をしてたんだ。だから、安心させる要素くらいは仕入れておきたい」

「ん……残念ながら、もっと辛い現実になっちゃうかもよ?」

「うん。それならそれでいいさ。それはそれで、気を使いやすいからね」

「あはっ、そういうもんなんだね」

そうやって頷くキリカは、俺の判断にダメ出しなんてしてこない。
いつだって『俺』の判断を信じて、それを肯定してくれるんだ。
人をの
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