縋り付きし自由に
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た。
意識が麗羽と七乃に向いている。だから、明は彼女の片腕の動きに気付かない。
「ちょこちゃん……めっ」
コツン、と斗詩の拳骨が明の頭に当たる。
それほど強くないが、彼女の意識を持って行くには十分であった。
「……なにさ?」
「好き放題はダメって言われてるでしょ? 麗羽様の言うこと聞かなきゃ、秋さんと華琳様に怒られちゃうよ」
「……」
「それに……且授様の事もあるんだから」
そう言われて漸く光が僅かに戻った瞳で、唇を尖らせた明は鎌をまた担ぎなおした。
「ちぇっ……つまんないのー」
どっと汗が噴き出た七乃は、目を一つ瞑って大きく息を吐きだし、呼吸を落ち着けて行く。
よろしい、と麗羽は微笑みに暖かさを込めて二人を見やり、斗詩はほっと小さく安堵を零して麗羽にお辞儀を一つ。
「真名を捧げた身ゆえ、命令は致しません。お教え下さいますね張勲さん? わたくしの敵は……何処に?」
とてもモノを頼むとは言えない物言いであったが、それが自然と思えた。
あくまで求めているのは敵。其処まで考えて七乃は気付く。
――私も敵に入るか否か……聞いてるわけですか。
頭が悪いわけでは無く、常に成績も一番で、外交という戦場を見つめてきた麗羽は駆け引きのイロハなど当然出来る。
もう後ろ盾の無い彼女は世界に存在を捧げる事で、真名の通りに麗しく飛び立ったのだ。
もう少し早ければと七乃は思う……が、無駄な思考だとすぐさま切り捨ててニコニコ笑顔を取り戻す。
「そんなの決まってるじゃないですかぁ♪ みぃんな一つ所に纏めて縛ってありますよぉ? 袁家の地下牢は無駄に広いですからねぇ」
「一部屋に何人?」
「五人ですね。壁に張り付けてあるので共謀して逃げることは出来ません。蓄えていた財蓄も没収してあるので、監視については其処から必要経費として払いましたぁ」
すらすらと述べる七乃の口はまだ止まらない。
「他にも必要経費としていろいろしてますよー?
周辺豪族の買収と恫喝、烏巣の後継への手打ち金、上層部の裏の情報と袁家当主の存命を開示、領地が荒らされることが無いという民への情報操作、他勢力への細作も滞りなく、次の戦の為にお塩の占有政策と徐州の利潤上昇を狙って商人たちにも話を付けましてー……あと、幽州全ての旧文官の再登用も済ませてあります。あ、南皮の内政については上層部の権限を預かっている私が掌握済みです。名門と言っても夕ちゃんや郭図さんに比べたら可愛いモノですね。細かい報告は書簡に纏めさせてあるので目を通してください」
久しぶりに忙しかったですよーっと楽しげに言い放つ七乃。ニコニコ笑顔が、化け物のソレにしか見えない。
こんな短期間に手広くやり過ぎだ……そんな感想を思い浮かべる麗
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