縋り付きし自由に
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を光らせている赤の少女だけには、気を抜いてはいけないのだ。
疑いを持つ、というのが彼女の力。
何故、どうしてと思考を積み、納得するまで調べ上げてきたから七乃は袁家の半分を操って来れた。飛び抜けているとは言い難い才だと把握しているが故に、本当に細かい部分でしのぎを削るしか無かったのだ。
信じる人間は一人でいい。大切な美羽だけを信じていればいい。それ以外は心の底から信じることなど出来ない。
特に夕を失った今、明が自分に対してどのような動きをするのかは疑っておいて損は無い。
ただ、七乃にはお構いなしで、麗羽はゆったりと玉座に腰を落ち着けた。
唇に指を一つ。妖艶なその仕草は、昔の彼女のモノでは無かった。艶やかさが際立ち、垢抜けた雰囲気に“磨きがかかり過ぎている”。
「……それで? わたくしの敵は何処にいますの?」
つい、と送られた流し目に、七乃の背筋の奥にはぞくぞくと寒気が走る。
――この人ってこんなに“怖い人”でしたっけ……。
知っている麗羽は臆病で虚飾の仮面を被った人形だったはず。分厚く重いバカの仮面を被れる時点で感嘆の念さえ感じていたが、さすがに今回の変化は許容できない。
斗詩と猪々子が居て、バカを演じて、その姿は愚かしくあろうとも確かに歴史上に有り触れている王だった。
決して考えたくは無かったが、“美羽の成長した姿を演じている”、とも言える程に。
それがどうか……今の麗羽は薄ら寒い覇気すら宿して、七乃の脳髄に警鐘を鳴らさせる程に恐ろしく感じるのだ。
僅かに乱れた思考の隙間に、麗羽は小さく、本当に小さく鼻を鳴らした。
「張コウさん」
「あいあいさー♪ ……っと」
「……っ!」
一瞬だった。
肉薄した明の大鎌は、既に七乃の首筋に当てられていた。
息を呑む間も無く、仄暗い黄金の瞳が七乃を覗き込んでいた。
「ひひっ、袁麗羽の敵でぇ、あたしの食べ物はぁ……ドコカナー?」
引き裂かれた口と赤い舌。発情したように息が荒い明の頬は熱が浮かび、もはや我慢の限界を思わせる。
カタカタと刃が震えていた。今すぐにでも七乃の頸を刎ねてしまいそうで、それを抑えるのに必死なのだと長い付き合いであるから直ぐに分かった。
「舌まで出して……はしたないですわよ、張コウさん。犬ではあるまいし、品位というモノを持ちなさいな。あなたは蝶なのでしょう?」
「あっは♪ 我慢してたんだからこれくらいいーじゃん。秋兄も桂花も居ないし、もうそろそろ抑え効かないんだよ。とっておきの話があるし、ちょっとくらい七乃でつまみ食いしてもいいよねー?」
ぎらりと光る瞳で麗羽を見やる明。不敵な微笑みで受け流す麗羽は、なんら気圧されることは無い。それが七乃には、恐れ慄きながらも不思議で仕方なかっ
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