縋り付きし自由に
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がにできませんが……約束いたしましょう」
「分かった! 絶対だよ? じゃあ麗羽さま、頑張ってね!」
「あ、少し待ってくださいまし」
ひらひらと手を振る少女に対して、片手を差し出す。それは対等である証で、破ることの許されぬ契約。
彼女は身分の隔てなく、誰もを救う為に尽力せねばならない。それがどんな小さな約束ごとでも、結ぶなら必ず履行される。
「此れからよろしくお願い致します」
「うん! よろしく!」
ただ、彼女にとってこの手は前とは別の意味を持つ。鎖とは成り得ず、自分が自分の意思で望む約束事で、自分がしたいと思うこと。
麗羽にとっては初めての民との絆。
憧れて憧れて、願ってやまなかった白馬の王が結んできたモノに似た、大切な一つの宝物。
壊れてしまいそうな程弱く小さな手と、たおやかな麗しい手が結ばれる。
世界に存在を捧げることで手に入れた自由に、麗羽は心の底から笑顔を浮かべた。
†
南皮の城は静かだった。
普段なら人が多忙を極めて動いているのが日常であるはずなのに、不気味な静寂に包み込まれている。
人が払われたその城の中では、ニコニコ笑顔で帽子をクイと抑えている七乃が玉座の脇で慎ましやかに手を揃えて立つだけ。
誰も居ない。玉座の間であるのに、彼女以外誰も其処には居なかった。
幾分、扉が開く。
ゆっくりと開いた其処から現れたのは……袁家当主にして世界に存在を捧げた女――――麗羽。
杖で支える脚とは別に、ギシリ、ギシリと片方の脚から軋んだ音を鳴らして彼女はゆっくりと、されども優雅さを崩さずに歩く。
歩みを簡易の絡繰で補助され、包帯が巻かれたどちらも痛々しい。
そんな彼女の後ろに侍るのは、二人。
切りそろえられた黒髪を揺らして、厳しい表情で七乃を見据える斗詩。そして、大鎌を肩に担いで、楽しげに笑みを浮かべながらひょこひょこと歩く明。
一人足りない事に一寸驚いた七乃は……明の笑みを見て、思考を幾重にも巡らせていった。
「おかえりなさいませー、“麗羽お嬢様”♪」
おどけた態度は完全にバカにしているモノにしか見えない……でありながら、皆に存在を捧げた麗羽を試す極上の手段。
情報を事前に得ていることなど、七乃にとっては当たり前。久しぶりに本気を出して疲れていたが、大切なモノが常に窮地に立たされている彼女は眠りを忘れるほど働き続けている。
「ええ、ただいまですわ。張勲さん」
七乃の試しの言葉に微笑みは欠片も揺らがず、優雅さも麗しさも翳らない。
――ホ、ホントに真名を捧げちゃったんですか、この人。狼狽しないなんて、有り得ないですよ……
驚愕に内心震えながらも、七乃は敢えて笑みを深くした。麗羽の後ろで目
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