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すり
2部分:第二章
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がらだ。三次は久吉に言った。久吉もそれに応える。
「ずっと長屋の中に引き篭もってかい」
「表の稼業の洗濯屋に専念してるでやんすね」
「真面目に足を洗ったってことか?」 
 このことからだ。三次はまずはこう考えた。
「それなら有り難いんだがな」
「そうでやんすね。けれど兄貴が知ってるあの女はそういう奴でやんすか?」
「すりから簡単に手を洗うかってんだな」
「へい。その辺りはどうでやんしょ」
「そんな筈がねえ」
 すぐにだ。三次はきっぱりと答えた。
「あいつはそんなタマじゃねえ」
「そうでやんすか」
「あいつのことを気付いてる奴は俺位なものだ」
 おみよの住んでいるその長屋、江戸の何処にでもある部屋が連なり障子で区切られ溝があるその長屋の小道を歩きながらだ。三次は言った。
「あいつは相当な腕前でな」
「すりの腕がでやんすね」
「そうだよ。すった財布から中身を幾らか取り出して元の持ち主に返すんだ」
「その財布をでやんすか」
「そんなことができる奴は滅多にいねえ」
 眉を顰めさせてだ。三次は話す。

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