五十話:ただ一人君の為なら
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確かにその方法ならば、エルは助かるだろう。だが、それは審判の失格を意味する。そうなれば人間はクロノスの目論見通りマナを生み出すだけの物になるだろう。そうなれば、結局エルは救えないのだ。
『お願い……分史世界を消して……ルドガーが……消えないように』
エルはルドガーが消えないようにとお願いをする。自分のことを一切顧みなくなった少女に彼は顔を歪めて考える。自分が何をすればいいのかではなく、自分が何をしたいのかを。そして彼はある選択をする。
『俺はオリジンにエルを助けてくれと願う!』
その言葉にジュード達が驚きの声を上げる。だが、ルドガーがそう答えるのは当然の事だろう。何故ならルドガーは初めから世界を救うためではなくエルを助けるためにカナンの地へと来たのだから。この世界よりもルドガーにとってはエルの方が大切なのだ。そんな姿に黒歌はそんな彼に愛して貰えることに喜びを感じる。だが、同時にやはり愛して貰うのなら傍で愛してもらいたいと切に願う。
『冷静になれ、ルドガー。娘など、この世界でまた生めばいい』
『そうだよね……エルは……ニセ物だし……』
ビズリーの言葉にルドガーの殺気が膨れ上がるが、エルが自分自身を偽物だと卑下したことで、その殺気は収まることになる。エルは悲しそうにルドガーの手を離すがルドガーはその手を再び握り直しエルに微笑みかける。そして、顔を引き締めて審判の門へと歩いていく。しかし―――
『ぐあっ!』
『願いの権利は私にある、ルドガー』
ビズリーから腹部に強烈な一撃をくらってルドガーは膝をつく。だが、その程度で諦める程ルドガーは諦めの良い方ではない。
『それなら、その権利を奪うだけだ!』
ルドガーは双剣を抜き放ち斬りかかるがビズリーはそれを軽々しく避けて再びルドガーに攻撃を加える。ルドガーは強くなったとはいえビズリーとは年季の差がありすぎるのだ。そこにミラがルドガーに自分がオリジンと話をつけるからエルの事は心配するなと言うが、ビズリーはマクスウェル如きに出来るのかと皮肉を言う。
『できるできないではない……やるかやらないか、だ』
ミラのその言葉はくしくもイッセーが辿り着いた信念と同じだったためにイッセーは目を見開いて驚く。その言葉にビズリーは不快そうな顔をして敵意をあらわにする。
『ち……所詮は、精霊に付き従う犬共か。私は、あれだけの屍を踏み越えてここに立っている!』
そう言って、ビズリーは審判の門に刻まれた時歪の因子化により犠牲になった一族の数字を指し示す。その数は99万9999人。その数に黒歌達は改めてこの審判の過酷さを思う。そして、ビズリーは、クロノスを磔にしていた槍を
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