6部分:第六章
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された」
指輪の呪いのことも思い出した。だがそれ以上にだ。
彼は自分が今まで相手にならないと思っていた人間に倒されたことを思いだ。そしてだった。
達観した顔になりだ。こう言った。
死ぬその時は間近に迫っていた。その中での言葉だった。
「倒されない者なぞいないか」
「それで御前は財宝と指輪を持っていたな」
「持っていけ」
もうだ。それへの執着はなかった。死を前にしては。
「好きにしろ」
「そうしていいんだな」
「俺はもう死ぬ。ならいい」
最早だ。執着はないというのだ。少年にもそれを告げた。
「持っていけ。だが最後にだ」
「最後に?」
「名前は何という」
彼の名前はだ。自分から聞いた。
「人間の少年よ、御前の名前は何という」
「ジークフリートだ」
少年はすぐにだ。巨人に対して名乗った。
「それが僕の名前だ」
「ジークフリートか」
「そうだ。御前は死ぬが覚えておいたら有り難い」
「忘れるものか。ではさらばだ」
別れの言葉を告げた。その時になったがだ。
彼は自分を倒した人間の少年、ジークフリートに対して恨みは感じなかった。彼が感じていたのはこの世に敵がいないという現実、このことだった。
このことを深く感じながらだ。ジークフリートに別れを告げた。
そうして意識が薄れていくのを感じ取った。そしてそのまま目を閉じて巨人は死んだ。誰にも倒されなかった筈の彼が今死んだのだった。人間の少年に倒されて。
ファフナー 完
2012・4・22
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