第一部
第五章 〜再上洛〜
五十四 〜陳留にて〜
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中を旅した経験があります」
「道案内という事かしら? 確かに、不自然ではないわね。でも歳三、貴方のは理由にしては弱いわよ?」
ふっ、やはり華琳相手にこれでは通じぬか。
「理由か。繁栄していると聞く、陳留をこの目で見たかった……ではいかぬか?」
「あら、それは光栄ね。けど、貴方は勅令で呼ばれている身。それを無視したと言われても仕方ないわよ?」
「無論、そんなつもりはないが」
「貴方がそのつもりだとしても、よ。今この時に取る行動としては、褒められたものじゃないわ」
「確かにな。だが、この折でなければ、身軽な行動が取れぬのもまた事実でな」
「ふむ……。なら、護衛を伴わない理由は? 貴方の許には関羽、張飛、趙雲、徐晃と一騎当千の猛者がいるわよね? 張コウは留守居だからともかく、他の将が貴方だけで別行動を取らせるとは思えないわ」
流石、我が陣営を正確に把握しているようだな。
全く、抜け目のない事だ。
「その事なら、心配は無用だな」
「あら、何故かしら?」
「まず、この地が華琳の影響下にある事だ。治安には何の不安もないであろう?」
「ええ。このエン州で、盗賊や無法者が大手を振って歩けるような真似はさせないわ。まぁ、白馬の一件は、痛恨の極みだったけど」
やはり、あの地にいた兵の通報でやって来たのか。
……尤も、典韋から事前に知らされていた可能性も否定出来ぬが。
「まだ、理由があるようね?」
「ああ。私と稟だけなら、夫婦と称すれば良いが、三人では怪しまれたら厄介。それ故、このような形としたのだが」
華琳は私の顔を暫く見ていたが、
「……ま、いいでしょう。一応、信じてあげましょう」
「そうか。それで華琳、お前こそ洛陽にいるのではなかったか?」
「ああ、その事ね。ちょっと持っていくのを忘れた書があったのよ。近いから取りに戻っただけよ?」
「なるほど。しかし、態々自らこうして参る事もなかろう?」
「知らせがあった容姿から、歳三以外にはあり得ないと思ったからよ。それなら、自分の目で確かめたいもの」
と、華琳は意味ありげに口角を上げる。
「そうそう。黄忠、と言ったかしら? 歳三について行くつもりが、何時の間にか姿が消えていた、って当惑していたらしいわよ? ただ、貴方の偽名には気付いてないみたいだけど」
「まさか、正々堂々と名乗る訳にはいかぬからな。黄忠と申す者、素性が定かな訳ではなかった故、な」
「慎重なのか、大胆なのかわからないわね。……とりあえず、陳留へ案内するわ。貴方が望むままに、見せてあげましょう」
華琳が私の話を全て信じたとは思えぬが、然りとてそれ以上追及しようともせぬようだ。
「歳三様。……先程曹操殿に言われた事、真ですか?」
稟が、声を潜めて訊いてきた。
「陳留行きの事か?……あながち、嘘
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