5部分:第五章
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第五章
「指輪は乙女達に返せ。いいな」
「何度も言うがだ」
「そのつもりはないか」
「この世を支配できる力を手放す者がいるか」
「破滅してもだな」
「破滅する筈がないから言うのだ」
竜の力を根拠にしての言葉だ。
「何度でも言おう」
「そうか。そう言うと思っていたがな」
「何だ。わかっていたのか」
「わかっていた。わかっていたうえでの忠告だ」
まさにそうだったというのだ。ローゲにとってもだ。
だがそれでもだった。彼はファフナーに確かに言ったのだった。
「あの指輪はラインの乙女達のものだ。権力なぞ目指しても何にもならん」
「その権力のお零れに預かっている立場の言葉か?」
「私はもうヴァルハラから離れている。だからそうした立場ではない」
「もう神々ではないのか」
「愛そうと思ったしヴォータンは嫌いではない」
ヴォータンへの感情も出した。確かに彼はヴォータンは嫌いではなかった。
だがそれでもだというのだ。今の彼は。
「しかし神々は彼等の目の先しか見えていない。だからだ」
「去ったというのだな、ヴァルハラを」
「その通りだ。私はもう去った」
「ではこれからどうするのだ」
「炎に戻りそのうえで己の責を果たすとしよう」
彼は己のやるべきことがわかっていた。炎に戻りヴァルハラもニーベルングの軍勢も焼き払いその時にヴォータンに最後の別れを告げ世界を人間達に託そうというのだ。
「そう考えている」
「そうか」
「そうだ。では何度も言うが指輪は捨てろ」
「本当に何度も言うな」
「それが御前の為だからだ。いいな」
「ふん、誰がそうするものか」
ファフナーはローゲの忠告を受け入れなかった。神々の主もニーベルングの主もどうにもできない彼を無力な人間達に何ができるかと思っていたのだ。しかしだった。
ある日だ。彼の洞窟の前にだ。こんな声がしてきた。
「出て来い!」
「むっ?」
その声にだ。ファフナーは反応した。洞窟の中から。
丁度寝ていたところだ。だがその声で目が覚めた。声を聞くとだ。
若い声だった。まさに少年の声だ。そしてだった。
「僕が相手をする!出て来い!」
「神か?それともニーベルングが?」
やはりだ。彼はまずはこうした存在を最初に連想した。
「愚か者が。やられに来たか」
「さあ、出て来い!」
まただ。声は洞窟の中の彼に言ってきた。
「相手をしてやると言っているんだ!」
「何度も言う必要はない」
地の底から響き渡る様な声でだ。彼は洞窟の外の声の主に告げた。
「ファフナーはここにいるぞ」
「御前は僕が倒す」
動きだしたファフナーにだ。声は言い続ける。
「覚悟はいいな」
「覚悟するのは御前だ」
「僕だというのか」
「そうだ、御前だ」
洞窟の
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