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至誠一貫
第五章 〜再上洛〜
五十三 〜三軍筆頭の勇者〜
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うな御方なのかと。……ただ、既に洛陽に向けて出立された後との事で、残念ながらギョウでは」
「然様でござるか」
「でも、関興さんにお会い出来ましたわ。図々しいと思われるかも知れませんけど、何故か、貴方様が気になるんです」
「拙者はただの旅人。買い被り過ぎでござろう」
「いいえ。船の上でも申し上げましたけど、私、人を見る目には自信がありますから」
「…………」
「宛もなく、と仰っていましたが。宜しければ、荊州をご案内しますわ」
 黄忠は笑顔でそう言った。
 ……無論、荊州などに向かう訳には参らぬ。
 だが、無碍に断れば、要らぬ疑いを招きかねないのも事実。
 我ながら、上手い言い訳が浮かばぬ。
 そう思い悩んでいると、
「黄忠殿。……貴殿を信じて、お話させていただきますが」
 稟が、そう言い出した。
「戯志才殿!」
「関索殿。こうなった以上、仕方ありませぬ」
 何やら、策があるらしい。
 ここは、任せてみるか。
 ……しかし、疾風もまた、微塵も動揺せぬとは流石だ。
 真っ正直な愛紗や鈴々では、こうはいかぬな。
「何でしょうか、戯志才さん」
「……実は、我々はある目的を帯びて、洛陽に向かっているところなのです」
「目的、ですか?」
「はい。旅を装っていますが、それは世を忍ぶ仮の姿なのです」
「…………」
 ゴクリ、と唾を飲み込む黄忠。
「その真の目的は……」
 と、その時。
「キャーッ!」
 絹を切り裂くような悲鳴が、辺りに反響した。
「義兄上!」
「うむ!」
 疾風は、手近な建物の屋根に飛び乗った。
「あっちです!」
「よし。参るぞ!」
「お待ち下さい。私も参りますわ」
 咄嗟の事だ、断るのも不自然だ。
「では、助力をお願い致す。戯志才、警備の兵がいる筈だ、探しだして知らせよ」
「はいっ!」
 私と黄忠は、疾風に従って走り出した。


「お願いです! そ、その子だけは返して下さい!」
「うるせぇ! いいからさっさと有り金と船を用意しろ!」
 街外れの一角で、黄巾党の残党と思しき男が、喚き立てていた。
 手にした剣を、抱えた子供に突きつけながら。
 そして、母親なのだろう、女が必死の形相で、子供に手を伸ばしている。
「義兄上。どうなさいますか?」
「見過ごす訳にはいくまい。……ただ、相手が多過ぎるな」
 二、三十名程、人相の良くない奴が集まっている。
 疾風の突破力で抜けられるか……。
 だが、不用意に近づけば、子供に危害が及ぶやも知れぬ。
「関興さん。私にも、お手伝いさせていただけますか?」
 と、黄忠。
「だが、貴殿の得意は弓でござろう? この場面で、どうされるおつもりか?」
「ふふ、弓は遠距離射撃だけが取り柄じゃありませんよ?」
 意味ありげに笑うと
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