第五章 〜再上洛〜
五十三 〜三軍筆頭の勇者〜
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目の前の黄忠が、あの黄忠だとすれば、私とも何かの縁があるのやも知れぬが。
しかし、今は名を偽っての道中。
今少し、人物を見定めた方が良いのかも知れぬな。
如何に大河とは申せ、川幅は半里程度、と言ったところか。
程無く、対岸へと到着。
船を降り、大地を踏みしめる。
黄忠も、我らの後に下船した。
「関興さんは、これから何方へ?」
「さて、気の向くまま足の向くまま、ですかな」
「あらあら、羨ましいですわね。宜しければ、途中までご一緒させていただけませんか?」
「……貴殿は公用と伺いましたが。戻らずとも宜しいのですかな?」
「確かに、公用は公用ですわ。ただ、私自身の用と言いますか、目的もあるんですわよ」
そう言いながら、黄忠は私を見た。
「公私混同はあまり感心とは申せませぬな」
「確かに仰る通りですわね。ですが、これは劉表様にもお許しいただいての事です」
「それと、我らとの同行を望まれる事が、どう繋がると?」
「はい。まず、私が命じられたのが、冀州の魏郡をこの眼で確かめてくる事です」
身構えようとする疾風を、私は目で制した。
「ほう。武官である貴殿に、そのような命を?」
「ええ。関興さん、旅をされている、と仰せでしたけど。今、大陸で盛んな街を挙げてみていただけますか?」
「……まず、洛陽。それから陳留、襄陽。それに、ギョウでござるかな?」
「はい。洛陽は正直、寂れ行く一方ですが……他の街は違いますわ。特に目覚しいのが、陳留とギョウでしょう。違いますか、戯志才さん?」
「いえ。その通りでしょう」
稟は淀みなく答えた。
「特に劉表様は、ギョウの目覚しい発展に強い関心を持たれていまして。それで、私に視察をお命じになったんです」
「黄忠殿。義兄上の質問に答えていないようですが」
「あら、ごめんなさい。確かに私は武官ですけど、これでも娘がいるんです。子を持つ母親としてどう映るか、劉表様はそれがお知りになりたいと」
子持ちにしては、若々しいが。
……む、年齢の事を考えた途端、脳裏で警鐘が鳴らされるのは何故なのだろうか?
「それに、こんなご時世ですから。私ならばこうして単身でも心配ないだろう、と」
「それが公用でござるか。では、私用とは?」
「それなんですけど……」
上目遣いに、私を見る黄忠。
……よもや、とは思うが。
「その、ギョウにおわす太守様に、一度お目にかかりたかったのですわ」
「……魏郡太守に、でござるか?」
「そうですわ。黄巾党を壊滅させた武功は勿論、腐敗しきっていた魏郡を見事に建て直し、大陸でも有数の発展に導いた土方様。荊州にいても、そのお名前は何度も耳にしました」
「…………」
「今のこの大陸で、そこまで有能な殿方は私は存じ上げません。それで、どのよ
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