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焼け跡の天使
6部分:第六章
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第六章

「それだけなのよ」
「それだけか」
「ええ、それだけ」
 またイワノフに言うがその言葉はまるで彼の心の中に言うようであった。静かに彼の心の中に入りそのまま滲み込む、そうした言葉であった。
「それだけなのよ」
「今まで俺も誰もかもが絶望していたが」
「人は絶望もするわ」
 少女はそれは否定しようとはしなかった。
「人間なんだから。当然よ」
「当然か」
「けれど。絶対立ち直れるものなの」
 そのうえでまた言うのであった。
「何があってもね」
「じゃあ俺も。この国も皆も立ち直れるんだな」
「ええ」
 彼の言葉をまた認めた。こくりと頷いて。
「わかったわね。それじゃあ」
「ああ、行くさ」
 前で人を集めていた。そこに向かいながら述べる。
「このままな。そして生きてやる」
 言葉に力が入っていた。もうそれは完全に柱となって彼を支えていた。
「この国と一緒にな」
「頑張るのよ。じゃあ私はこれで」
「あんた、まさか」
 ふとここで最初に見た場面を思い出した。それは。
「天使なのか」
「違うわ」
 少女は微笑んでそれは否定した。
「天使みたいに厳しくはないわ。あんなふうに絶対でもないわ」
「じゃあ一体あんたは」
「見て」
 翼を出した。その翼の色は。
「黒、か」
「そう、これが私の翼」
 自分の背中にあるその漆黒の翼を見せていた。それは大きく羽ばたきまるで全てを覆うかのようであった。その翼をあえてイワノフに見せていたのだった。
「これでわかってくれたかしら」
「ああ、よくな」
 彼女が誰かはわかった。しかしそれを笑顔で受け入れることができていた。
「そういうことだったのか」
「本当はこんなことするつもりじゃなかったわ」
 少女はその静かで清らかな声でイワノフにまた告げた。
「本当はね」
「それでどうして」
「この国の人達を見ていると。どうしても」
 我慢できなかったのだ。そういうことであった。
「そういうことだったのか」
「それに貴方もね」
「俺もか」
「もう立つ気はなかったでしょう」
 最初に会った時のことを問うてきた。
「あのまま。ずっと」
「ああ、その通りさ」
 イワノフはそれも認めた。
「もうな。あのまま寝ちまうつもりだったさ」
「わかっていたから。だから」
「そうだな。寝るのにはまだ早かった」
 今それがわかった。まだその時ではないと。
「起きているさ。ずっとな」
「そうしていて。人は何度も絶望して何度も起き上がるものだから」
「それをあんたが言うのか」
「悪いかしら」
「というかな」
 少女に対してまた述べる。
「複雑だよな、そこは」
「人を助けるのは天使だけじゃないから」
「むしろ天使の方こそかな」
「そういうも
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