第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十二 〜洛陽へ〜
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、ちぎれんばかりに手を振る。
「では、参るぞ。全軍、出立!」
「応っ!」
後ろ髪を引かれる思いを残しながら、我々は一路、洛陽へと向かい始めた。
ギョウから洛陽までの間には、黄河が横たわる。
無論、船で渡河する事になるが、これだけの規模となると、適した場所というのは限られるようだ。
「途中、進軍を遮るような賊などは見当たりません」
と、疾風(徐晃)。
「尤も、今の我らに襲いかかろうなどと言う、無謀な輩もおりますまい」
「星の申す通りでしょう。やはり、最短経路で行くのが望ましいかと」
「……うむ」
私は、地図を今一度、見つめた。
「歳三様。何か、気がかりでも?」
「いや。稟、渡河に適した地は何処か?」
「はい。この規模ですから、黎陽から船を使い、そのまま洛陽の北まで向かうのが宜しいかと」
「そうすれば、後は洛陽までは僅かな道のりですしねー」
「では、此処を通る経路はどうか?」
と、私は地図の一点を指し示した。
「白馬、ですか。確かに渡河出来る場所ではありますが……」
「でもですねー。そっちを通ると、渡河した後が大変なのですよ」
風の指が、地図の上をなぞっていく。
「御覧の通り、黄河の支流が複雑に入り組んでいて、とても動きにくい地形をしていますよ?」
「……つまり、官渡に砦を築けば、河北から攻め入られても守りやすい……そうだな?」
「ぐー」
……何故、そこで寝る?
「主。何か、お考えでも?」
「うむ。その辺りの地形を見ておきたいのだが」
「にゃ? お兄ちゃん、何か気になる場所でもあるのか?」
「うむ。些か、な」
稟は少し考えてから、
「ならば、軍を二手に分けましょう。我が軍の大半と袁紹軍は、やはり黎陽からそのまま黄河を遡る経路を取ります。一方、歳三様と警護の兵だけは、仰せの通り白馬へ渡河し、陸路洛陽へと向かえば宜しいかと」
「だが、軍を分けた理由はどうつける?」
「それは、考えてあります。袁紹殿の協力さえいただければ」
「……わかった。袁紹殿の説得は、私がすれば良いな?」
「御意」
数日後、黎陽に到着。
街としてはそれなりの規模ではあるが、交通の要衝だけに人の往来は多いようだ。
「では、此処で軍を分ける」
「お兄さん。あの娘に知られてしまいますけど、大丈夫ですかねー?」
風が、声を潜めて言う。
無論、典韋の事だ。
「構わぬ。華琳の事だ、むしろ私の意図を知りたがるだろうしな」
「しかし、ご主人様。怪しいのならば、理由を付けて別働隊に回す方が良いのではありませぬか?」
「私も賛成ですぞ、主。曹操殿が主を買っているとしても、何か企んでおらぬという証拠はござらん」
確かに、用心に越した事はない。
……だが、この数日間、典韋を見ていてわかった事
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ