2部分:第二章
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第二章
「お師匠様」
それを見て弟子の一人が彼に問い掛けていた。
「もう準備はできたでしょうか」
「うむ、これでいい」
清明は唱え終えたところで彼に答えた。
「何時でもな」
「それでは留守はお任せ下さい」
弟子はこう彼に申し出てきた。
「暫しの間ですが」
「頼むぞ」
清明も穏やかな調子で彼に応えた。
「それでは。行って来る」
「はい」
清明の姿が霧の様に消えた。後には何も残ってはいなかった。弟子は生命が消えた後の場所に頭を垂れるだけであった。まるで彼がそこにいるかのように。
清明はその林の横に現われた。まるで煙の様にそこに。
「ここだな」
姿を現わした清明はすぐに辺りを見回す。見れば周りに人の気配はなく静かなものであった。月夜に時折虫の鳴き声が聞こえるだけであった。
まずは人の怪我意がないのを確かめてから次に林の中を見る。見ればそこには灯りがあった。道長の話していた通りであった。
「あれだな」
その灯りを見て呟く。そうしてまた姿を消して灯りに近付く。近付いて見ればそれは狐火であった。狐が火を灯してそこで糸を織っていたのです。
清明はそれを見てまずは何とも思わなかった。だがそれでもその狐に問わずにはいられなかった。
「これ」
「はい?」
見れば白い年老いた狐である。狐は彼の気配に気付いて彼のいる方に顔を向けてきた。細長い実に狐らしい顔をしていた。
「何でしょうか」
「ここで糸を織っているのだな」
「その通りです」
狐は穏やかな声で清明に答えた。声も決して邪悪なものではなかった。
「それが何か」
「どうしてここで織っているのだ?」
清明が聞くのはそこであった。
「驚いている方がおられる。人を驚かせる為ではないのだろう?」
「そのつもりはありません」
狐も静かにその言葉に頷いた。
「人を驚かすのは私の趣味ではありません」
「ではどうしてだ」
清明は狐に問うた。
「ここで織っているのだ」
「まずはですね」
狐はここで清明に問い返してきた。
「貴方はどなたですか?」
「私か」
「はい、お姿が見えませんが」
狐が次に問うのはそこであった。
「それはどうしてでしょうか。もしや」
「陰陽道だ」
清明はそう答えた。
「わかった。では姿を見せよう」
「御願いします」
こうして清明が姿を現わした。狐は彼の姿を見て言った。
「安倍様ですか」
「私のことを知っているようだな」
「はい、よく承知しています」
狐はやはり静かな調子で答えてきた。
「ご高名は私もよく」
「それはいい」
とりあえずは自分のことはいいとした。
「問題はだ」
「私のことですか」
「そうだ。どうしてこの様な場所で糸を織っているのだ」
それをまた狐
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