第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十一 〜城下での出会い〜
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伺って参ります」
一礼し、顔良は出て行く。
「疾風。もう良いぞ」
「……お気づきでしたか」
物陰から、疾風が顔を覗かせた。
私の事が気がかりだったらしく、下がる振りをして潜んでいたようだ。
すぐに気はついたが、好きにさせておいた。
「顔良は、全く気付かなかったようだな。流石だ」
「いえ。顔良殿には申し訳ないのですが……彼女も武人としては、隙がありますね」
「そうかも知れぬな。正面切っての一騎打ちならばともかく、それ以外では疾風らには及ぶまい」
「……苦労している事だけは、伝わりましたが。袁紹殿がそこまでとは……」
規模こそ違えど、疾風は立派に、一軍の将を勤め上げている。
呆れるのも、無理はない。
「歳三殿。袁紹殿の事、あまり深く関わらぬ方が良いかと」
「……うむ」
難しいところだな。
すぐに顔良が戻らぬ為、私は私室に戻っていた。
「ご主人様」
そこに、愛紗が顔を出した。
「どうかしたか?」
「いえ、鈴々を見かけませんでしたか?」
「いや、軍議の後から見てはおらぬが」
「そうですか……。全く、どこへ行ったのやら」
愛紗は、大きな溜息をついた。
……ふと、空腹感を覚えた。
外を見ると、日がかなり高い。
「そろそろ昼時ではないか?」
「もう、そんな刻限ですか?」
「……もしや、鈴々はそれで見当たらぬのではないか?」
あっ、と愛紗は声を上げる。
「鈴々め、こんな時に……。すぐに、探して参ります」
「いや、待て。私も参る」
「え? ですが、お忙しいご主人様にご足労をおかけしなくても……」
「いや、気晴らしに城下に出てみたいというのもある。暫くは、見納めになるであろうしな」
「はぁ……。そう仰せとあらば、お供致しますが」
「よし。誰かいるか?」
「はっ!」
廊下にいた兵士が、駆け寄ってきた。
「袁紹殿に、昼食をお出し致せ。私は少し城下を見てくる故、二刻後にとお伝えせよ」
「ははっ!」
城下は、今日も盛況だった。
「また、人が増えたようですね」
「そのようだ。各地から商人が集えば、商品も増え、金も廻る。さすれば、住み着く人間も増える」
「はい。見て下さい、子供達もあんなに」
優しい眼をする愛紗。
「愛紗は、子供が好きか?」
「ええ。私塾を開いたのも、子供達と直に触れ合う事が出来る、そう考えたというのも理由ですから」
「……そうだな。子は国の宝、大事にせねばならん」
「仰る通りです。……戦乱の日々が終わったら、また子供達と共に過ごす生活に戻りたいものです」
「愛紗なら、良き母親になれそうだな」
途端に、愛紗は真っ赤になる。
「なななな、何を突然仰るのです!」
「違うのか? 子供好きであれば当然、我が子を持ちたいと考えても不思議では
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