第六章
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「いや、目の病気になりまして」
「それで、ですよね」
「暫く入院されていたんですよね」
「あれがかえってよかったです」
このことを言うのだった。
「本当に」
「それはどうしてですか?」
「結構大変な状況だったみたいですけれど」
「すぐに入院してくれとまで言われた」
「そうした状況だったそうですけれど」
「それでもですよ」
笑顔での言葉だった。
「それがかえってよかったんです」
「ええと、目が悪くなって入院して」
「それで」
「そのことがですか」
「かえってよかった」
「それで金メダルもですか」
「そうです、獲れました」
まさにそれによって、というのだ。
「お陰で」
「目の病気になってですか」
「いや、それは意外ですね」
「あの時は困りました」
眼病を宣告され入院したその時はというのだ。
「けれど」
「それでもですね」
「はい、今はです」
それこそというのだ。
「よかったと思います」
「他の感覚が鋭くなって」
「それで潜在能力も出て」
「いや、人間何がどうなるかわかりませんね」
自分でこうも言った倉見だった。
「目が悪くなってそこからよくなるって」
「ううん、人間万事塞翁が馬っていいますけれど」
「倉見さんについてもそうなんですね」
「目が病気になってそれで」
「金メダルを獲得出来たんですね」
インタヴューをするマスコミの面々も唸った、その彼の話を聞いてだ。彼のその話は記事にされ伝わった。そして。
彼はそこから眼病を克服して、でなく眼病から目覚めたと言われる様になった。倉見はその記事を見て岩松に言った。
「俺も思いませんでした」
「目の病気からな」
「こんなことになるなんて」
「本当に世の中ってやつはな」
しみじみとしてだ、岩松も言った。
「何がどうなるかわからないな」
「本当にそうですね」
「全くだよ」
「じゃあ次のオリンピックに向けて」
倉見は岩松にこうも言った。
「練習していきますね」
「あと瞑想もだな」
「目を閉じるとそこから」
「チャクラがさらにか」
「開放されるみたいなんで」
このことは禅宗の僧侶の書いた本やクンダリーニについての本を読んでからそのうえで学んだことである。
「やります」
「そしてだな」
「また金獲ってみますよ」
笑って言うのだった、そして彼はその鋭くなった目以外の感覚をさらに養いつつ次のオリンピックに向かうのだった。
眼病から 完
2014・12・26
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