第一章
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眼病から
倉見流は大学柔道のホープと言われていた、その強さは相当なものでオリンピックの金メダル最有力候補と言われていた、だが。
不意にだ、彼は練習中に目に違和感を覚えてだ。部の監督である岩松大作にこう言った。
「ちょっと目の調子が」
「おかしいのか」
「はい、どうも」
「それはまずいな」
目と聞いてだ、岩松はすぐにこう言った。
「今日はもう練習を休んでな」
「それで、ですね」
「病院に行け」
つまり眼科にというのだ。
「それで診てもらえ」
「わかりました」
「何かあるとまずいからな」
「そうですね、じゃあすぐに行って来ます」
「ああ、行って来い」
岩松はこう言って倉見を病院に行かせた。倉見は大柄で筋肉の発達した如何にも柔道選手という身体から柔道着を脱いで普段着になって病院に行った、その時も目に違和感があり。
少し不安になりつつ眼科に行き診察を受けた、そして診察を受けてだ。
医師が彼にだ、眉を顰めさせてこう言った。
「完治はするがね」
「えっ、まさか」
「君の目はね」
それこそというのだ。
「結構重い病気だよ」
「眼病ですか」
「うん、すぐに入院してね」
そして、というのだ。
「治療を受けてくれるかな」
「すぐですか」
「今まで気付かなかったのかい?」
医師は怪訝な顔になって倉見に問うた。比較的短い髪をオールバックにして引き締まった顔立ちの彼をだ。
「これまで」
「はい、今日少し違和感を感じまして」
「来たんだね」
「そうでしたけれど」
「そうか、まあ今日気付いただけよかったよ」
「それで、ですか」
「すぐに入院してだよ」
そして、というのだ。
「治療だよ」
「そうしないとですか」
「下手をしたら失明するよ」
「失明って」
「そうなったら君も嫌だろ」
「勿論ですよ」
言を持たなかった、このことについては。だから倉見は医師にすぐに答えた。
「俺柔道選手ですし」
「柔道にしてもね」
「目が見えないと」
それこそだった。
「どうしようもないです」
「そうだよ、だからね」
「すぐにですね」
「入院してくれ、いいな」
「わかりました」
こう答えるしかなかった、それでだった。
倉見はすぐに入院して治療を受けることになった、その間目には包帯が常に巻かれていた。その彼のところにだ。
岩松は見舞いに来てだ、難しい顔で言った。
「参ったな」
「あっ、監督ですか」
「ああ、俺だよ」
倉見はベッドの上に寝て上体を起こしている、包帯で目のところを覆っているがだ。顔だけ岩松に向けていた。
その彼にだ、岩松は言うのだ。
「見舞いに来たぜ」
「有り難うございます」
「目のことは聞いた
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