第三章
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「他のことをされてはどうでしょうか」
「楽器かしら」
「具体的には」
まさにそれだとだ、翠は喜久子に答えた。
「それです」
「楽器ね」
「ピアノはどうでしょうか」
翠はこの楽器を勧めた。
「やっぱり音楽の勉強にはピアノは必須ですよね」
「ええ、作曲家の人もいつも向かい合ってるし」
「ですからどうでしょうか」
こう喜久子に勧めるのだった。
「ピアノをされては」
「そうね」
喜久子は翠の言葉を受けてそうしてだった。
少しの間考えてだ、こう答えた。
「それならね」
「されてみますか」
「どうせ今は歌えないから」
だからだと返すのだった。
「それならね」
「はい、その歌えない間は」
「ピアノをしてね」
「そうしてですね」
「歌以外の音楽をしてみるわ」
「ピアノも深いですし」
だからピアニストという世界が存在しているのだ、そうした意味では歌もピアノも同じである。共に音楽の世界にあるから当然である。
「ですから」
「ええ、やってみるわね」
「じゃあ早速」
翠は明るい顔になって喜久子に言った。
「はじめましょう」
「ピアノならうちにあるし」
喜久子の家にだ。
「元々時々弾いてたわ」
「音楽の勉強の為にでしたね」
「弾くとわかるのよ」
「その曲が」
「だから時々でも弾いてたから」
「ですから都合がいいです」
翠は喜久子にこのことからも勧めた。
「はじめましょう」
「それではね」
こうして喜久子は歌えない間その代わりにピアノをしてみた、これまで歌っていた時間の分演奏をしたが。
これがだ、喜久子にとってはかなりよく翠に笑顔でこう言えた。
「何かね」
「演奏しているとですか」
「凄くね」
それこそと言うのだった。
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