番外23話『急転直下』
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めに一瞬の時間が生じる。ハントの狙いはその一瞬の時間だ。
「今度こそ! ……5千枚瓦せっ!?」
ハントが間合いを零へと潰しその拳を――
「雷光!」
――いや、既にハントはエネルから距離をとっていた。
ハントの拳が振り下ろされるよりもエネルの体から放電されるほうが速いということを察知していたのだろう。得意の魚人空手陸式を振るう前にエネルの雷光の範囲内から逃れていた。
「……げほっ、くっ」
エネルの口から僅かとはいえ咳と血を漏らす。
またもや自分の雷が決まらなかったということに対してか、それとも腹部を蹴られた痛みか。どういった感情にせよ苦い表情を浮かべるエネルに対して、ハントはごく自然な表情を浮かべてそれを見つめていた。
これまで神、すなわち恐怖たる存在として周囲の存在をひれ伏させてきたエネルに対して、恐怖心が見えるでもなく闘争心が見えるでもないという普通の表情。まるで気負いが感じられないそのリラックスしているような表情が、エネルは気に食わない。
――おのれっ。
苛立ちのままにハントを睨み付け、そこで気づいた。
――……? ……なんだ?
違和感に。
いつもなら感じることの出来る絶対的有利性。そこから生まれる心の余裕。エネルが神として神たる存在の根幹のもう一つ。
雷を放出するとき、基本的にそれは必中で必殺。そしてそれで戦闘は終了。
だからこそ戦闘時にわざわざ見聞色の覇気、エネル風にいうならマントラを発動してこなかったため気付けなかったエネルだが、ハントを警戒するべき相手として認識した今になってやっと気づいた。
――マントラが……効いていない?
エネル自身の感覚がおかしいのかと、マントラの網を張りなおせば他の人間の息吹は全くもって問題なく感じる。もちろん息吹自体はハントのものも感じることは出来ている。ただ、マントラの持つもう一つの側面。
何をしようとしているか、これからどう動くのか。
それがハントからは一切に感じられない。
神の裁きを一度受けて気を失ったものの今現在、平然と動いている。雷そのものであるエネル自身を殴り、掴み、さらにはマントラも通じない。それどころか今までの動きからすれば逆にエネルを見聞色で先読みをしている節すらある。エネルのマントラはハントに通じていないにも関わらず、だ。
「何なのだ……何なのだ貴様!?」
「……いや、何って言われても」
流石に焦りの色を隠せないエネルの問いかけに対してハントは静かに、だが困ったように僅かに首をひねる。
「……んー」
答えを考えること数秒程度だろうか。ハントにとってはたかか数秒。だが、エネルにとっては数時間にすら感じられるほどの沈黙を経て、やっとハ
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