第二章
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「その様に」
「それでは」
こうしてだった、アンジェリーゼはその物足りなさを感じる理由を両親や兄に聞いてみた、だがそれでもだった。
三人共だ、わからないといった顔で答えるばかりだった。
「いや、我が家は」
「あらゆるものが手に入って」
「不足はない」
それこそ何も、とだ。両親と兄はアンジュリーゼに語るのだった。
「だからだ」
「何がもの足りないのか」
「言っている意味がわからない」
「そうですか」
アンジェリーゼは両親と兄の言葉を受けてこう返すしかなかった。
「私がもの足りないと感じる理由は」
「このお屋敷も使用人の者達も全て素晴らしいではありませんか」
母のソフィア、アンジェリーゼをさらに優雅かつ優しい面立ちにさせた感じの貴婦人が娘に大してこう言った。
「何もかもが」
「そうですね」
「そして貴女自身もです」
他ならぬアンジェリーゼ自身もというのだ。
「学業も順調でお友達にも恵まれていますね」
「学園での部活も楽しんでいます」
フェンシングをしている、それで大会で何度も優勝もしている。アンジェリーゼ自身文武両道でその穏やかで優しい性格から慕われている。
「満足しています」
「それでもですか」
「何かがです」
足りないと感じているというのだ。
「それがどうしてかわかりませんが」
「そうなのですか」
母は娘のこの言葉も受けた、そして。
暫く瞑目して考えてからだ、娘にあらためて言った。
「そうですね」
「そうですね、とは」
「若しかしたらですが」
言葉を出す間も考えている、それだけ思索を続けているということだ。
「貴女はこれまで小説も読んできましたね」
「はい」
実は読書も好きだ、両親や家庭教師から勧められた名作とされているものを数多く読んできている。
「時間があれば読んでいます」
「どういった小説が好きですか?」
「色々ですが」
「恋愛小説は」
母は娘の目を見て尋ねた。
「どうでしょうか」
「恋愛、ですか」
「そうです、好きでしょうか」
「それなりに」
これがアンジェリーゼの返事だった。
「好きです」
「そうですか、それでは」
「それではですか」
「貴女はずっと女子校に通っていますしこのお屋敷でもモモカ達に囲まれていて」
まさに家族以外の者とはだ。
「男性とお付き合いしたことがありませんね」
「では」
「おそらくそのもの足りないものは」
「それは、ですか」
「恋愛でしょうか」
こう娘に言うのだった。
「私が思うことですが」
「恋愛ですか」
「そうではないでしょうか」
「では男性と」
「男性だけとは限りません」
ここでだ、母の口調は微妙に変わった。そしてその口調で言うことはというと。
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