第三章
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「頼んだぞ」
「さすれば」
重臣もまた家光の言葉にすぐに応えた、そしてだった。
その者はまずは家光と会った、家光は密かにその者に会いまずはその顔を見て言った。
「徳川の血が見られるな」
「有り難きお言葉」
見ればその通りだった、何処か家光に似ているところのある顔だった。
その弟にだ、家光はさらに問うた。
「名は保科正之といったな」
「左様であります」
弟は兄の問いに素直に答えた。
「その名を頂いております」
「幼名は幸松か」
「はい」
「ではこれからは御主を幸松と呼ぶ」
こう彼に告げたのだった。そのうえで彼にまた言うのだった。
「してじゃ、幸松」
「何でありましょうか」
「御主のことは聞いておる」
まずはこう述べたのだった。
「それでじゃが」
「それで、ですか」
「父上に会うか」
正之に対してだ、家光は率直に問うた。
「そうするか」
「父上といいますと」
「そうじゃ、あの方じゃ」
まさにという口調での言葉だった。
「先の将軍にして大御所の秀忠公じゃ」
「あの方にですか」
「そうじゃ、会うか」
「その様なことが」
「出来る、余が何とかする」
その為に力を尽くすことをだ、家光は正之に約束した。
「将軍の言葉じゃ、わかるな」
「では」
「将軍は嘘を言わぬ」
その面子がありだ、断じてしないというのだ。
「武門は嘘を言わぬ、ましてやその棟梁たる余はな」
「それ故に」
「そうじゃ、御主と父上を会わせる」
また正之に約束するのだった。
「だからこそ」
「では」
「うむ、それではな」
家光は正之を二人の父である秀忠に会わせることを約束してだ、そのうえで。
すぐに自身の臣下達と共に手配を整えてだ、まずは江戸城の西の丸にいるその秀忠に対して隠してこう言った。
「父上にお会いしたい者がいるのですが」
「余にか」
「左様です」
まずはこう言ったのだった。
「ある大名の家の跡継ぎでして」
「大名のか」
「そうした者ですが」
「そなたからは話が整っているか」
「はい」
既にとだ、家光はあえて表情を消して秀忠に答えた。
「こちらでは」
「ならばよい」
将軍が話を整えたならとだ、秀忠は答えた。大御所であるが将軍である息子の顔を立ててこうしたのである。この辺りは彼の父であった家康と違うところであろうか。
「それではな」
「有り難きこと、それでは」
「ではその者を呼んで参れ」
「わかりました」
こう秀忠に答えてだ、そしてだった。
秀忠は正之と会った、このことに秀忠が驚いたことは言うまでもない。116
この会見の後だ、家光は共に秀忠と正之が会うことを手配した重臣達にまさかという顔でこうしたことを言ったのだった。
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