第二章
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「だからだよ」
「そうですか」
「ああ、俺が初瀬さんを見捨てたから」
「あの人は」
「死んだからな」
「それでそのことを」
「背負っていくんだよ」
これからもというのだ。
「そうしていくさ」
「わかりました」
「そう、それが大人というものよ」
ここで鳳蓮がだ、光実に言った。
「自分がしたことから逃げずに背負っていくものよ」
「どんなことですか」
「人間はね、弱いものなのよ」
こうも言う鳳蓮だった。
「悪いこともしてしまうのよ」
「そしてその悪いことを」
「そう、背負うものなのよ」
そうだというのだ。
「そうして成長して生きていくものなのよ」
「そうですか」
「だからね、貴方もね」
「自分のしたことから逃げずに」
「いえ、貴方は逃げていないわ」
鳳蓮はそれは否定した、光実は自分がしたことから逃げてはいないというのだ。
「自覚しているわね」
「はい」
「それならよ」
「僕は逃げていないですか」
「そう、ただね」
「背負っていてですか」
「それに押し潰されかけているわね」
それが今の彼だというのだ。
「確かに貴方がしたことは酷いことばかりだから」
「はい、そうですね」
「けれどそうしたこともね」
「背負っていくしかないんですね」
「潰されずにね」
そうしてというのだ。
「そうしていかないと駄目なのよ」
「どんなことでもですか」
「ワテクシにしてもそうよ」
「鳳蓮さんも」
「そう、悪いことをかなりしてきたわ」
「それでもですか」
「ええ、背負っていっているつもりよ」
自分もというのだ。
「後悔も反省も一杯してきたわ、正直こんな苦いものはないわよ」
「そしてその苦いものを」
「受けて生きていくのが大人であり人間なのよ」
「人間ですか」
「そしてね、救いもあるのよ」
光実にこうも言うのだった。
「世の中にはね」
「神様ですか」
「神様仏様もいれば人もいるから」
「人間が」
「そうしたあらゆる存在に人は救われるものなのよ」
顔を上げて手を組み祈る様になったうえでの言葉だった。
「それは貴方もなのよ」
「僕も」
「それこそシドや戦極凌馬みたいになればどうしようもないわ」
「それはどうしてですか?」
「彼等は自分のことしか考えていなかったでしょ」
「はい」
「そしてそれに気付くことはなかったわ」
それこそ死ぬまでだ。
「そんな連中は救われないの、けれど過ちに気付いたのなら」
「そうした人はですか」
「そう、救われるの」
即ち光実の様な者はというのだ。
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