8-3話
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左右に大きく揺れていてとても不安定になり、どうあがいても次の攻撃を凌げられる状態ではなかった。
「だ―――」
私は、無意識の内に足が動いた。
声を絞り出しながらその凶行を止めようと、今度こそ私は真っ直ぐ駆け出した。
「…駄目えええぇぇぇっ!!」
「っっ……!?」
背後からの強襲。
その場にいたアキラ君も石斧を持った少年も、私の出現に判断力が止まるほどに驚いた。
わずかな間の無防備なその瞬間、私はそこにある背中に向かって私は肩で体当たりを仕掛ける。
判断力の止まった石斧の少年は反応が遅れてしまい、ただの体当たりを避ける事も出来ずまともに喰らった!
「ぐぇっ!?」
手応え…は弱かった。
女の、それもクタクタになった足では、勢いがあってもその威力は強くなかった。
ちょっと小柄でも相手は男子で、崖に足を踏み外す一歩手前で踏み止まった。
「はぁ…はぁっ……!」
間一髪だった。
あと一瞬でも遅ければ、石斧はアキラ君を殺していた…。
「り、りおん…お前、どうしてここにっ!?」
アキラ君が私を目にして驚いた声をあげる。
私は彼の無事を見て安堵するも、それは浸る間はなかった
「お、ま…え……!!」
怨嗟が込められた声が響いた。
少年は振り返り、怒りを滲ませた顔を…私は見る事は出来なかった。
身を翻して振り返ったそこには―――仮面があった。
何かの民族伝統の仮面のようなモノが少年の顔に張り付いていた。
目と口だけしか空いていない異様さを形にしたかのような無機物の造形が私を睨みつけてきた。
「危ねぇじゃねかぁ〜……」
おどろおどろしい声だった。
今まさに崖下に落ちそうになって命の危険を感じた人間のモノは思えないほど、その声は怒りを滲ませている。
するとその仮面の少年は、アキラ君に向けていた凶器を……私の方へと矛先を変えた。
「ひっ……!」
不細工な石の刃を見て、小さく悲鳴が零れた。
あれが人に向かってつもりだとわかっていると、矛先が向けられた事に怖さで体が震えた。
「あと一歩踏み外していたら崖下に落ちてたぞ…? こいつを助けようとしたつもりかぁ…?」
崖っぷちに立っているのに、臆すること無く向けられた負の感情に、まるで私の方が追い詰められているように思えた。
こんな憎たらしさを込めた声は、私は聞いたことがない。 猛獣とは違う恐ろしさ…人が持つ殺意というモノを感じて、私はたたらを踏んだ。
「おい! やめろ! そいつに
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