8-3話
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
呼吸が苦しくなって時間感覚が鈍っていた。
大きく回り道をして、だいぶ高い所まで来たけど…ここまで猛獣の一体も出なかったのが幸いしていた。
一人で飛び出して来て、自分一人だけで遭遇したらアキラ君を助けるどころではなくなっていた。
しかし…足がそろそろ疲労を訴えてきた。
「…くっ……ぅ、はぁ…はっ、はぁ、はっ……!」
疲れによって視線が俯く。
急がなきゃいけないのに、足が言う事を聞いてくれない…坂道を登る一歩一歩が重くなる。
無造作に生い茂る木々が視界を阻んでいて、どれだけ進めばアキラ君の姿を見る事ができるのかわからない。
精神的に消耗していく中、私はほんの小さな小石につま先を引っかけてしまった。
「あっ…!!」
疲労した足でふんばる事が出来ずに転んでしまった…。
膝を擦りむいてしまわないように反射的に両手で地面を着いて、そのまま蹲ったまま動けなくなった。
「はぁっ……はっ、はぁ……」
息が苦しくて呼吸を荒くさせて、地面に手を着いたまま動けない。
急ぎたい気持ちがあっても、体が上下に呼吸するばかりで動けずにいた。
痛い…転んだ膝が痛い…酸素を求める肺が痛い…。
「キュル…?」
肩にしがみ付いていた仔リスは心配そうに小さく鳴き声をかけてきた。
アキラ君が心配……それはわかっているけど、仔リスの言葉無き鳴き声では苦しくなった体を動かす助けにはならなかった。
だが、その時…声が私の意識を惹いた。
「…―――!」
声が、聞こえてきた。
近い……男の子の声が、向こうから……。
誰の声なのか…高所を吹き付ける風によって起きた葉擦れの音に邪魔されて、よく聞こえなかった。
確信はない。 遠目で見た時には勘が囁いた確信が、今になって私に疑惑の不安がよぎった。
本当にあれはアキラ君だったのか…今聞こえた声はアキラ君のものだったのか……真偽に不安を抱いて、鼓動が別のリズムを叩いた。
「………」
進まなきゃ…。
這いずって進んで行って、茂みの向こうにある光景を見た。
「(ア、アキラ…君…)―――…っ!?」
無事であって欲しいと思う人の姿を見た。
上半身をツタで巻かれ、下には降りるべき地面がない所で枝を支点にして宙吊りにされているアキラ君の姿があった。
まだ生きているとわかる姿でそこにある―――だが、そこには…私の目には異様に映るモノがあった。
アキラ君の姿の次に、私は否応なしに真っ先にソレが目に入った。
あれは…鈍器…? …石の、斧……!?
なんであんなモノがあるの…?
それがなぜ…アキラ君に向
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ