8-3話
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かの直感が働いた。
「アキ、ラくん…―――?」
ほんのわずかに、学生服のような布色と、幼馴染と思わしき髪型が見えた気がする。
望遠鏡もない裸眼ではハッキリと確認できるわけがない。 だが女の勘といったものだろうか、十中八九あれが幼馴染のアキラ君なのだという予感を強めた。
予感は否定よりも先に危機感を煽る。
「なんで…なんで、あんな所に…!?」
普通じゃない。
“崖の上で浮いている”なんて状況は普通じゃない。
遠目からでも、アキラ君と思わしき物体は“崖の上に立っている”ようには見えなかった。
どういう状況かはわからなくて、極めて危険な状況に置かれているのは明らかだった。
なんで危ない事に…。
とてもシンプルにそれが危険を伴う状態なのだと分かってしまった。
私は自然と体が走り出そうと動いた。
ここで待ってて、と言われたジェニアリーさんの言葉は忘れていない。 だが、あれを見て走り出さずにはいられなかった。
「…あっ!」
駆け出した矢先に、私はとても近くにある背後の存在に足を止めらせた。
振り返ればそこには、暴漢となった人達に囲まれて拘束されている友人の姿がある。
アキラ君と同じように、危ない状況にある真理谷君がそこにいるのだ。
何てことだろう…すぐそこに友人がいるのに、この場を立ち去らないといけないなんて…!
自分には何も出来ないとわかっていても…友人を置き去りにするのは後ろ髪を強く引っ張られる。
でも…アキラ君が…! ジェニアリーさんが言ってたように“最悪な事になってるかも知れない”…それが今にもそうなってもおかしくないのだ。
「アキラ君……真理谷君……!」
視線を崖の方に…そして、振り返って木々の向こうへと視線が彷徨う。
そして私は―――。
「ごめんっ……真理谷君っ…!」
迷いを振り払うように、重い足取りに鞭打った。
真理谷君から背を向け、アキラ君のいる崖の方へと駆け出す。
「あとで…あとで、必ず戻ってくるからっ…!」
アキラ君を助けて、必ず助けに戻って来る。
心苦しい選択に言い訳しながらも、私は…失いたくないがために、最善を尽くそうと走る。
そう誓いながら崖の方向へ進む足は、疲れを訴えても止まる事はなかった―――。
――――――。
「はぁっ、はっ…はぁっ…!!」
息を切らせても走り続ける事、十数分……いや、それよりも長いかも知れない。
運動部で体力はそれなりにあるつもりだ。 だけど、崖を迂回して長い坂道を駆け登ったため疲労で胸が痛い。
アキラ君の所に辿り着こうと無我夢中になるほど走ったため、
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