暁 〜小説投稿サイト〜
探し求めてエデンの檻
8-3話
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中が幾分(いくぶん)か楽になったのを実感できた。
 不思議な事だけど、この二十センチもないような小さな仔リスは、私の心を支えるために(そば)にいてくれているみたいだった。

 私は、潰さないようにその仔リスを抱きしめた。
 キュゥ、と仔リスは(うめ)くように鳴いたが、嫌がってる素振りはなく私の胸に大人しく包まれてくれていた。
 周りがわからないジャングルの中で、この小さな存在が在るという事が頼もしくて心が落ち着く。
 こんな気分になるのは…子供の頃に、怖い事があったら布団を被って丸まっていた時のような……いや…“あの頃”もだろうか…。

 仔リスを抱きしめて、宝石箱の片隅(かたすみ)で仕舞っていたかのような思い出を思い出して、私は怖さを忘れる事が出来た。 いや…まだちょっと怖い。
 …よし、少し落ち着いた。

 怖さを(まぎ)らわして、視線を(めぐ)らせてジェニアリーさんの姿を探す。

「……周りはやっぱり木ばかり…そして向こうは…」

 ずっと剣呑(けんのん)な雰囲気をさせていた人達が真理谷君とCA(キャビンアテンダント)さんに怒鳴り散らしている。
 どうしてあんな風になってしまったのか…あの人達は、近づくのが怖いほど恐ろしい表情をさせていて、同じ人間とは思えなかった。
 つい昨日までは…互いに助け合おうと寄り()っていた人達とは思えない。

 奮起(ふんき)した気持ちが怖気付いてしまいそうになる。
 だけど、見てるだけというのも…ジッとしていられなかった。

「ジェニアリーさんはああ言ってたけど…何か、できる事は…」

 私はもっと広く周りを見渡した。
 石でも棒でも何かあれば…などと、大した事をするわけでもない、でも何かしないと落ち着いていられず、何か無いか辺りを見渡した。
 下を見渡し、横の(しげ)みを観察し、上まで見上げて樹に何かないか探した。

「…ん?」

 その時だった。

 何かがあった。
 視界の中でポツンと、一度見たら見逃してそのまま気に留めないほど小さな点。
 木漏れ日と私のいる位置、陽の向き加減、違和感のように小さなソレを注意深く意識した事、様々な要因が重なり合って見つける事が出来たただの偶然。
 木の葉の隙間(スキマ)の向こうにある断崖絶壁(だんがいぜっぺき)、その上に浮かぶ小さな物体(ひと)があった。

 妙な胸騒ぎがした。
 点にしか見えないほど遠くあるその物体が、崖の上に浮かんでいて、それが崖下に真っ逆さまに落ちかねない状況にある事が、妙にざわつく不安を抱いた。
 その小さな点に向けて目を凝らした…遠くにあるその物体がおおまかな輪郭(りんかく)しかよく(とら)えられないながらも、その形を見て私の中で何
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