4部分:第四章
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だった。
「声は何処から返って来たんだい?」
「ええと」
父の声に応えながらその声が返って来た方を指差す。そこは幾重にも連なる多くの山の中の一つだった。彼はその山を指差すのだった。
「あの山だよ」
「呼ぶ子は声を返して来るんだよ」
「あっ、そうか」
ここで勇夫はわかったのだった。
「じゃあ呼ぶ子はあそこにいるんだね」
「そうなるね。じゃあ今からどうするんだい?」
「呼ぶ子探しに行こう」
彼もまたあの時の剛と同じことを言うのだった。
「今から。あの山まで」
「おいおい」
自分の手を握って引っ張ってきたのも同じだった。
「今からか」
「だってさ。あそこにいるんだよね」
父の方を振り返らない。やはり。
「だったら行こうよ。早く」
「仕方ないな」
一応はこう言ってみせるのだった。
「けれど。夜になるまでだぞ」
「それまでに見つけろってこと?」
「そうだ。約束できるか?」
「うん、するよ」
やはりこれも同じだった。あの時と。
「だから行こう、お父さん」
「よし、それじゃあ行くか」
こうしてあの時と同じように行く剛だった。進みながらあの時のことを思い出してもいた。父がどういった気持ちでわざと呼ぶ子のことを言ったのかも。そうしたことも今わかったのだった。父になってそして今に至って。わかったのだった。
呼ぶ子 完
2009・4・14
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