四十八話:約束の地、呪われた宿命
[10/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
実に声が出ないルドガーの耳にずっと聞きたかった声が聞こえてくる。
『かして! ルドガー? エルだよ!』
『エル! 今どこに―――』
『ルドガー! もうあんなことしなくてよくなるから! もう誰も消えたりしないようにエルが、お願いするから! エルの力があれば、それが出来るんだって! 大丈夫だから! ルドガーは来ちゃダメだよ』
ルドガーの言葉を遮るように必死に思いを伝えて来るエルにルドガーは声が出ない。そんな様子にリドウも話を聞きやしないとばかりに肩をすくめてみせる。
『エル頑張るから……だから……約束やぶっちゃったけど……ゆるしてね』
その言葉を最後にして電話は切れる。ルドガーは慌ててかけ直すがビズリーが着信拒否をしたらしく繋がらない。そんなルドガーを見てルルが悲しげな鳴き声を上げる。そして、リドウがこうなったらビズリーに任せるしかないと言い、さらには、下手に手を出すと、俺達もエルみたいに利用されると嫌味を言う。
『エル……』
『ナァー!』
ルドガーはエルに来るなと言われたことに悩みながら一先ず、ジュードとミラに事の次第を教えるためにルルと共に一階のロビーへと降りていく。すると、何やら騒がしかったので見てみるとジュードとミラが真実を教えないヴェルに業を煮やして口論をしていた。二人はルドガーに気づくとすぐに寄ってきて何か分かったかと聞いてきたのでルドガーは先程、知り得た情報を伝える。
『精霊を道具に……それがビズリーの真の目的だったのか』
『しかもエルを利用するなんて』
『ビズリーを止める。カナンの地に行くぞ!』
そう言うミラに対して、ルドガーは俯いて答えを返さない。ジュードも何事かと声をかけるがルドガーの足は動かない。ルドガーは悩んでいたのだ。エルはもちろん助けたい。だが、他ならぬエルにそれを止められてしまった、自分を守る為に。
しかも、思い返してみれば今まで行ってきた自分の行動でエルを傷つけていたのだ。それなら自分は行かない方がいいのではないかとルドガーは考えていた。そんなルドガーに黒歌はいつも彼に感じる強さではなく、弱さを感じていた。ルドガーとて何かから逃げたい時はあるのだと。
だが―――
『そんなのエルの本心のわけないよ! 大事な人と離ればなれになって、平気なはずないじゃないか!』
ジュードの怒鳴り声がロビーに響き渡る。かつてミラと離ればなれになったことのあるジュードの言葉はルドガーに重くのしかかった。そんな言葉に黒歌はルドガーも自分と離れてやはり辛いのだと確信する。だからこそ、自分がこうしてルドガーを連れ戻しに来たは間違いではないのだと肯定されたような気持ちになる。
『目を醒まして貰うよ、ルドガー!』
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ